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モノ足りなくて…でも好きで…『序章』
日時: 2005/06/09 22:22
名前: 妃薙瀬ユウ

 今日は、とてもいい天気だった。なのに…。
「もう、何で昼寝してるのよぉ。こんなにいい  天気なのに」
ボク(ちなみに女)の彼『麻野友紀(あさのゆき)』は、昼寝が  好きだ。だから、天気が良かろうが悪かろうが、
よく昼寝をしている。
 ボクは『氷野由宇璃(ひのゆうり」)』。友紀
と違って、天気のいい日は大好き。でも天気の
悪い日は少しテンションが下がる…。彼は、よ
くボクに言う。
「一緒に昼寝しよ」
ムードなんて、これっぽっちもない。でも、こ
れが友紀なんだけどね。物足りないって思うの
は、贅沢なのかなぁ…。
 友紀のことは好き。告白してきたのは友紀の
方なんだけれど、ボクのどこが好きなんだろ。前
に、一度聞いた事があった。
「ねぇ、友紀。ボクの、どこが好き
  なの?」
すると友紀は答えた。
「由宇璃の、全部が好きだよ」
マンガのキャラクターがよく言うような
事をアッサリと友紀は言った。
 少し、恥ずかしかった。まさか、こん
な事を言う人が本当にいるとは思わなかった。
   ボクは真剣なのに…
よく分からない。男のコって。
 友紀はボクのことが分からないって
言っていたけれど、やっぱり、ボクも
自分というものが分からない。人間って、
得てしてそういうものだと思う。
 
  放課後、ボクは珍しく屋上にいて、
雲を眺めていた。雲は、形を変える。
それも著しく。友紀は、雲が流れるの
が好きだって言っていた。そうかもし
れない。
「あーあ。今日は、何か友紀と帰りた
くない気分…」
そんなことを呟いていた。ボクは、彼
女失格だ。
 深いため息を吐く。本当に、幸せが逃
げていってしまいそうだ。
(友紀、授業中も寝てたな…)         あれでよくモテると、つくづく感心する。
 友紀の周りは、今日も女の子がいた。
ボクという彼女がいるのに。あんなにい
つもボーっとしてるヤツが、何でモテる
のかというと…実は友紀は、顔がカッコ
いいのだ。(ボクは顔に興味はないけれ
ど)
 顔目当ての女たち。顔顔顔顔。所詮顔
なのだ。友紀のこと一番分かっているの
は、やっぱり、ボクかもしれない。いや、
『かも』というより、本当にボクしかい
ない。顔目当てなんて、友紀の心は全然
わかっていないくせに。って、友紀がい
つも寝てる訳を、ボクは知らないけれど。
 そんなこんな、考えてるうちに、後ろ
から声がした。
「氷野さん、こんな所で何やってるの?」
2組の杉山君だ。
「え、何でもないけど」
彼の方を見ずに答えた。クールに言って
も、杉山君がいなくなる気配はない。
「…杉山君?何か用なの?なければ、ひ
とりにしてもらいたいんだけれど」
ボクは髪の毛を少し掴んで、うんざりし
たように言った。すると、後ろで杉山君
があせったように「あっ」と言ったのが
聞こえた。
「あの、氷野…さん。その、話があるん
だけど、いいかな…?」
 いつもは堂々としている感じの杉山君
が、こんな態度をするなんて、おかしい。
ボクは直感的に、『ヤな予感』がした。
「…いいけど、何」
友紀は今頃、教室で昼寝だろう。あと30分   は、来そうにもない。
「氷野さん。君に、麻野という彼がい
るのは知ってる。でも、今はオレの気
持ちを最優先させてくれないかな…」
      杉山君の気持ち?
       最優先って?
少し、頭が混乱してきた。杉山君の気      持ちなんて、優先できそうにもないよ、
今のボク。
「オレ、氷野さんのことが好きなんだ。
麻野よりも、ずっと。だから、アイツ
なんかやめて、オレにしない?」
 30秒間、ボクの体は硬直した。
         好き!?
      杉山君が、ボクを!?
ありえない。ボクは、これといって目      立った事はしていない(友紀の彼女と
いうだけで目立っているということに
は気付いていない)。だから、学校で
人気ナンバー2の杉山君に告白される
覚えなんてないのだ。
「杉山君…何でボクが…」
続きは言えなかった。いきなり、屋上
のドアが開いて友紀が入ってきたから     だ。しかも、凄い形相で…。
(あんな友紀、見たことない…)


     
        
  ・序章・
     終了
メンテ
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告白の前に―番外編― ( No.1 )
日時: 2005/07/03 18:08
名前: 妃薙瀬ユウ

 俺は『麻野友紀』。『氷野由宇璃』
の彼氏だ。
 

 あの日は、体が溶けるかと思う程
暑い真夏日だった。
 あの時の氷野はとてもクールで、
女子の間では少しうっとおしがられ
ていた。男子は、気の強い氷野を怖
がっていた。俺は美術部、氷野はテ
ニス部。殆ど接点がないのとおまけ
に、部活の種類も違う。俺は文化部。
氷野は運動部。しかも、2組と5組
という離れたクラスで、話したこと
もなかった。
 しかし、7月の半ば、俺は氷野と
初めて話した。話し掛けたのは、氷
野から。
「ねぇ、絵って、得意?」
氷野が話し掛けてきた時、正直驚い
た。男子はみんな怖がっていたし、
女子は氷野をうっとおしがっていた
し。俺はうわさでしか知らなかった
が、氷野の母さんは実は、毎日のよ
うに遊び歩いているらしい。最近で
は、ここ数ヶ月、一度も家に戻って
きていないとか言われている。氷野
の性格は、その母親のせいなのかも
しれない。
 俺は数秒黙ったままでいると、氷
野がもう一度聞いてきた。
「絵、得意なの?」
はっとして、彼女の目から視線を外
した。
「…得意な方だけど、何か用?」
彼女は、俺の顔が嫌いなのか、それ
とも、ただ後ろが気になったのか、
顔を後ろに背けた。
「ボクの顧問の先生が、絵を描ける
ヤツを連れて来いって言ってたから。
用があるから来てくれない?」
(…彼女は、自分のことをボクって
言うのか)
俺は少し以外な顔をした。
「やっぱり以外?ボクって言うの」
彼女は、俺の心情を読み取ったのだ
ろう。多分、人が何を考えているの
か、何を思っているのか、顔(正確
には目)を見るとわかるのだろう。
「以外。てっきり、オレとか言うの
かと思った」
彼女は小さく息を吐いた。
「ストレートに言うんだ。嫌いじゃ
ないけど、そういう人」
彼女もストレートに言うと思う。自
分でもきっと気付いているかもしれ
ないが。
「用って、そのこと?」
「ええ、それだけ。来なくても構わ
ないよ。ほかの人を捜すから」
彼女はわかっていると思う。自分が
頼みに行ったら、無視されるという
こと。あえて、俺にプレッシャーを
与えているのだろう。
「いいよ、行く。で、どこ?」
彼女を可哀相と思ったわけではない。
ただ、ヒマだっただけだ。決して可
哀相だと思ったわけではない。
「悪いけど、外」
「……いいよ、俺よりもずっと氷野
の方が暑い所にいたんだし」
数秒、氷野の動きが止まった。
「ボクを、知ってるの?」
「え?」
「ボクのこと、何で知ってるの?」
一瞬、何を言ってるのか分からなく
なった。
「何で知ってるって、アンタ、有名
だし…(ある意味で)」
氷野は、「ふーん」と興味を示すよ
うでもなく、かと言って、どうでも
いいようなのかわからない返事をし
た。
「ま、何でもいいけど。早く来ない
と、うちの顧問、長谷川だからすぐ
キレるよ」
長谷川先生は、男で数学の担当をし
ている。俺は、あの先生が嫌いだ。
どこかの家の御曹司とか言って、権
力を見せびらかしているからだ。金
持ちって、みんな先生みたいなのか?
「わかった、今行く。案内してよ」
俺は椅子から立ち上がった。氷野は
後ろを向いて、ドアノブに手をかけ
た。その時だった。
「あー!あの氷野さんが麻野クンと
一緒にいるー!」
俺にうるさく言い寄って来るヤツの
一人だ。何度も言ってるのに、また
俺の周りをうろついていたのか。
「お前なぁー、何で俺の周りをうろ
つくんだよ。ウゼーって言ってんの、
聞こえなかったのか?」
「だってぇー、好きなんだもんvずっ
と見ていたいんだもんv」
こいつの名前は佐野唯。親に甘やか
されて育った、ワガママ娘だ。
「好きになるのは勝手だけど、ストー
カーまがいのことはすんなって何回
言えばわかんだよ。脳みそ詰まって
んのかよ?この中は」
「……麻野クン…いやよいやよも好
きのうちって言葉知ってる?ホント
は唯のこと、好きなんでしょv」
   あぁ、何て言えばいいんだ…
気が付くと、氷野が物凄く気持ち悪
そうな顔をしている。それに、怒り
マークも数個ついている…。
「佐野、今急いでるからあっち行け」
しっしっと、あっち行けという仕草
をしたら、すねた顔をした。
 だが、俺は無視して氷野に言った。
「早く行こう。怒ると恐えぇぞ、長谷
川は」
氷野の背中を押しながら、俺は言った。

 廊下で、氷野が俺に尋ねてきた。
「あの女って、いつもああなのか?」
もっともな質問だと思う。まるで子供
だもんな…佐野は。
「…休み時間とか、部活中、いっつも
あんな感じだ」
「…気疲れしない?」
「する」
氷野は、いつの間にか俺の後ろにいた。
そして、突然肩を揉みはじめた。
(何か気持ちいい…)
「…ふ〜ん。結構凝ってるね、肩」
歩きながら揉んでくれるのは嬉しいんだ
けど、俺の方が背高いから逆に氷野の方
が疲れると思うんだけど…。
「なぁ、氷野疲れねぇか?背伸びして、
しかも歩きながら」
「いーの、そんなこと。とりあえず行こ。
センセー待ってると思うし」
(氷野って、実は優しいんじゃないか?)
俺は心の中で思った。
 小さく氷野には聞こえない声で呟いた。
「…こいつが嫌われる、理由がわかんねー
よ……」
氷野は耳がいいのか、肩揉みの手を休めて
俺に聞いてきた。
「何?痛かったか?」
 でも、呟いた内容までは詳しく聞こえな
かったようだ。俺は適当にはぐらかした。
「なんでもね。肩揉みはいいから、走って
いこーぜ。もう5分も経ってるし」
氷野はさっと時計を見て「げっ」と言った。
「うわ…あのセンセ、時間に厳しいからきっ
と怒鳴るな…」
「早く、急ごう」
焦る氷野の手をひいて、俺は言った。
「……」
一瞬、無言になった氷野に疑問を抱きつつ、
俺は外へ向かった。
  
 それがきっかけで、俺たちは“友達”に
なった。女子たちは、俺と氷野が仲良くなっ
たことに腹を立て、氷野をいじめだした。
しかし、氷野はそんなことで引き下がるヤツ
ではないことを知っていたが、氷野はそれが
いらついたのか、俺と休み時間をいつも一緒
にいるようになった。
 そのことが、佐野の耳に入った。
「麻野君と氷野由宇璃が…付き合ってる?」
俺と氷野の仲は、付き合っているという噂と
なって、校内中に広まっていた。
 その噂は、俺と氷野の耳にも入ってきた。

 「なぁなぁ麻野!お前、氷野と付き合って
るってホントかよ!?」
俺の同級生の佐々木は、放課後の美術室で絵
の具の色をパレットで作りながら俺に問う。
佐々木も美術部の部員なのだ。
「…は?何だよ、それ」
初めて聞いた噂に、俺は少し戸惑った。
「違うのか?」
佐々木は、パレットに入れ過ぎた絵の具
に気付かないようだ。 
「佐々木、絵の具、溢れそう」
俺が注意すると、佐々木はパレットを見
て大袈裟に嘆いた。
「やっべー!!!この色あんま使んねー 
とこのやつじゃん!何でもっと早く言わ
ねーんだよ!」
「自分の不注意じゃん…」
俺がそう言うと、佐々木が俺の左腕にべ
ったりと絵の具を付けた。
「何だよ、早く言わねーお前がわりぃ!」
(火に油注いでどーすんだ、俺)
佐々木の行動に腹を立てるわけでもなく、
俺はさっき言われた噂を心の中で暗唱し
てみた。
(俺と氷野が付き合ってる…俺と氷野が
……付き合ってる?)
信じられない噂だった。俺と氷野が付き
合ってる…。誰がそんなデマを流した?
(…氷野は、この噂を聞いたのか?)
気になったのは、氷野はその噂を聞いて、
俺と二度と喋ってくれないのではないか
ということだった。

 同時刻。
「氷野さん。ちょっと顔貸してよ」
同じ部活の先輩にトレーニングの邪魔を
され、少しいらついた。
「今忙しいんで、後にして下さい」
顔も上げずに、ボクは言った。
「すぐ済むから」
「…」
ボクの意見を聞かずに、先輩は乱暴にボ
クの腕を取った。
 向かった先は校舎裏。暴行をするには
カッコウのいい場所だ。少しベタだと思
いながら、ボクは先輩に言った。
「移動する理由がある用事なんスね」
少しタメ口をきいた。
「…何を言おうとしているかは、もう分
かるわよね」
…先輩の言いたいこと?そんなこと知ら
ない。
「なんのことっスか?」
「はぁ?しらばっくれる気!?あんたが
友紀と付き合ってるってこと、もう知っ
てるんだからね!!!」
「!」
麻野とボクが付き合ってる!?
「何ですか?その話。知らないっスよ」
「もう学校中の噂になってんのよ!」
…なんだ。
「噂ですか。じゃあ、事実じゃないです
ね。話はそれだけですか?なら、そろそ
ろ戻らなければいけないですから」
ボクは先輩を押し退けて行こうとした。
「待ちなさい!」
肩を掴まれ、後ろに転びそうになったが、
なんとか体勢を整えた。
「まだ何か?」
まだ言い足りないのか。こっちは急いで
いるのに。
  ブンッ
「!」
先輩が右手のこぶしを、ボクの腹に振り
下げた。しかし、ボクはそれをぎりぎり
で見切り、よけた。
「このっ!」
先輩は、もう片方の手をボクの首に回し
て、首を絞めようとした。
   ―息が…―
気を失う寸前…。
「氷野!!!」
    ―あ…さの?―
麻野の、声が、聞こえた、気がした。
     心臓が、おかしい。
  さっきよりも、たくさん脈を…。
    首を、絞められたから?
ボクの意識は、消えた。
  
 「ここは…」
目が覚めたボクの視界に、一番初めに入って
きたものは―…。
「麻野…」
「気が付いた?もう、平気か?」
麻野と、見知らぬ、部屋。
「ここどこっ!?」
一瞬、パニックに陥ったボクを宥めるように、
麻野は落ちた毛布をボクに掛けてくれた。
「ここは、俺の家」
「?」
「先輩に、首を絞められて気絶したんだよ」
        ―首を?―
「何で、ボクが首を絞められなければいけ
ない?」
聞かれると思っていたのか、麻野は、予め
用意していたようにその答えを言った。
「俺と氷野が、付き合ってるって噂を聞い
たからだよ」
ふわりと微笑みながら言う麻野は、かっこい
いというよりも、綺麗だった。
「…」
少しの間麻野に見惚れていると麻野の顔が、
真っ赤に、耳まで真っ赤になった。
(あ…)
「ひっ氷野、喉渇かない?何か、飲み物持っ
てくる」
顔を背け、背中を見せて麻野は飲み物を取りに
行った。
「―麻野?」

  ―やっっっばいよな…。氷野が、可愛い
なんて…―
自分の心の変化に気付き、戸惑う。
 氷野のことを思うと、少し胸が熱くなる。
「俺、病気…かなぁ?」

(麻野、何か変だった。ボク、麻野に何か
したのか?)
氷野は、麻野の態度に少し疑問を抱いた。
 麻野が部屋に戻ってきたのは、それか
ら20分後だった。
「麻野、遅い。ボク、何かした?」











メンテ
蟹蝙蝠って知ってる? ( No.2 )
日時: 2005/07/29 15:16
名前: 兎菊

長いね。ユウさん。兎の方にもコメント頂戴ね。
良い文を沢山書いてな。(^^)
メンテ
ひとつ質問です。 ( No.4 )
日時: 2005/08/06 17:06
名前: 兎菊

妃薙瀬ユウさんは何故縦長に文を打つんですか?









軽い疑問。
メンテ

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