第1章ここはとある繁華街地下鉄の駅を中心に衣料専門店やブックセンター、パチンコ店やゲーセン等の遊戯施設が立ち並ぶ。もちろん「アニメイト」もある。この地下鉄駅を利用し私立中学や高校に通う学生達も多い今日も学校生活をおえた学生達が、この駅から出てくる。中学生達はそのまま真っ直ぐ家路に向かうのだが高校生ともなると、近くの本屋に立ち寄ったり衣料店を覗いてみたりCDショップで商品をあさってみたりと、まぁ〜色々と興味を持ち出す年頃でもある。しんへいは今日も行き着けの「アニメイト」でお気に入りのアニメソングのCDを買いあさっていた。彼はパワラン学園の2年生で学園きっての悪である。その彼がアニメイトで目的のCDを「購入」したのか「拝借」したのかはふれないが、アニメイトから出てきた。2つ目の角を曲がるとゲーセンがありその横の駐車場を通り掛かったその時である、彼の目が光ったゲーセンの横の駐車場で見るからに不良と思える連中が数人たむろしていた。しんへいは根っからのケンカ好きで、不良を見ると拳が騒ぐ。「おまえらアフォ高校の生徒だろ。 ウンコはトイレでするんだよ。 んなぁ事も分からん程アフォなのか?」ヤンキー座りしている不良達に、とてもとても挑戦的な言葉でけしかけるしんへい。不良達の視線が一斉にしんへいに向けられる。「ほ〜パワラン学園のしんへい君じゃないの〜」どうやらしんへいは他所の高校まで名が知れ渡る程、有名な悪のようだ。不良の一人がそばに落ちていたバットを手に取り「なめてんじゃねぇ〜よ!」としんへいに殴りかかった!しんへいは素早く身を交わしふところからムチを取り出したら、それはS☆J。ここでのしんへいはムチなど使う訳も無い。身を交わしたしんへいは向かってきた不良に右拳でジャブを2発噛まし留めにボディーブローを食らわせた。うずくまって苦しんでいるそいつからバットを取り上げ「次はどいつだ〜?」とバットを振り回し挑発する。そこに40そこそこのおやじが通りかかった。「ほ〜、面白そうな事やってるじゃん」そう言ってこの場に割って入って来たこのおやじ。パワラン学園の野球部監督のアロハーだった。「お前バットの振り方まちがってるぞ」アロハーはそう言うとしんへいのバットを取り上げ、「バットってのはこうやって振るもんだ」とスイングして見せた。ブンという空気を切り裂く音の凄まじさにそこに居合わせた不良達は、このおやじが只者では無い事を一瞬で感じ取った。俺からいとも簡単にバットを取り上げたあの腕力といい今のスイングといい、このおっさん只者では無い、そうあっけに取られているしんへいに、おやじは「スイングしてみな」とバットをしんへいに戻した。そう言われて素直にそうする悪は居ない。「へ! 何言ってんだこのおやじは おめぇ〜の頭ぶん殴ってやろうか!」しんへいがそう息巻いた。「おいおい、ぶん殴るのは俺の頭じゃない」アロハーは笑いながらそう言い返すと、バックから何やら取り出した。「ぶん殴るのこれだ」そう言って見せたのは真っ白の硬式野球ボールだった。アロハーはその場から数10メートル歩いていき、「さぁ〜いくで〜! ぶん殴れるものならぶん殴ってみな!」そう言うと、その白球を右手に大きくワインドアップすると左足を高々と蹴り上げ、上半身の反動をフルに使った豪快なピッチングフォームでしんへい目掛けて魂心の1球を投じた。放たれたその球は凄まじいスピードでしんへいの脇腹あたりをかすめ後ろのフェンスに突き刺さった。その球のあまりのスピードにしんへいは全く身動きする事すら出来ず、その威力に一瞬だが恐怖心すら感じた。「この俺が・・・ビビッタ?」その時、彼の心に明らかにこの白球に対する闘争心が刻まれた。アロハー「お前、パワラン学園の生徒だろ。俺はそこで野球を教えている。その白球をぶん殴りたかったら野球部の4軍に遊びにきな!」そう言い残すと彼は駐車場に止めてあったハーレーに跨り何処えと去っていった。そう言えばカッコイイのだが実は3軒となりの「アニメイト」へはいっていったのだった。あくる日、しんへいが野球部の4軍部室に姿を現したのは言うまでも無い。部室の扉を開けたそこには、見慣れたガン面が並んでいた。ゆう、ヨウ、ガンク、みんな学園2学の悪である。しんへい「お前ら野球部だったのか?」ゆう「しんへいじゃん! お前がなんでここに?」実はゆうやヨウ、ガンクは中学時代野球をやっていて、高校に入ってもこの学園の野球部に入部したのだが、当初は1軍で華麗にプレーしていたものの、生活面で問題ばかり起こし、今ではこの4軍チームにぶち込まれた次第でここでの彼らの生活はと言うと、部室でマージャンをしたりタバコを吸ったりと野球のそれとは全くかけ離れた悪の愛好会というか溜まり場となっていた。「で、お前何しに来たんだ?」加えタバコのヨウがしんへいに問いかけた。まさかこの状況を見て野球を習いに来たとか言えるわけが無い。しんへいは「俺もマージャン混ぜてくれよ」と空いてる席に腰掛け、内ポケットから洋モクの「ウィンストン」を取り出し、それを吹かしながら彼らに混じってマージャンを始めた。「ウィンストンとはしゃれてんじゃん」ヨウはマイルド7愛好家だがそのおしゃれなケースがとても気になり一本俺にも吸わせてくれよとまさに不良の溜まり場の光景であった。「で、お前ら野球の練習とかはやんないのか?」としんへいがそれとなく聞いてみた。ガンク「今更野球なんてやってられっかよ!」ゆう「んだ〜んだ〜」ヨウ「野球ってなに?」しんへいは、まじめに野球に興味を持ってここにやってきた自分がはずかしくなり「野球なんてバカがやるもんだよな〜!」と大言を吐いた。すると3人は声を合わせてしんへいに言い放った。「てめ〜!野球の事をバカにするんじゃ無い!」3人は野球を知らない物から野球をバカにする言葉を聴いて余程腹がたったようで、実は3人とも心の底では今でも野球が大好きなようである。つづく
第2章10月ともなるとさすがに日が暮れるのも早く、国道も水銀灯が煌々とアスファルトを照らす。1台のバイクのヘッドライトが鈍い低音の単調なリズムをきざみながら直進してくる。その独特の排気音は、ハーレー特有のX形2気等エンジンのそれだとバイク通なら直ぐに分かる。信号待ちで既に停車していた1台のバイクの横にハーレーが後ろからやってきた。止まっているバイクの方は見るからに暴走族のそれと分かる仕様で、またがっているもの学ラン姿の高校生。「ん? ハレーじゃん」学生は横に並んだバイクに目がいった。ハーレーのライダーも学生のバイクに目がいった。「ん? しゃばいバイクじゃん」お互い心の中でそうつぶやいた。2人は目を合わす事も無く信号が青に変わり2台のバイクは発信した。威勢よく飛び出したのは言うまでも無く高校生のバイク。しかし次の路地からいきなり車が飛び出してきた!「!!!」ヤバイ、かなりヤバイ高校生の脳裏に緊迫感が走った!「ジェット噴射だ〜!」でこの場を回避したいとこだがこれはS☆Jでは無い。彼は考えるよりも先にバイクをコントロールしていた。アロハー「ほう、 あいつ凄いな」そう後ろを走っていたハーレーに乗っているのは、パワラン学園野球部監督の、あのおやじだった。高校生はとっさに飛び出した車を、巧みなバランス感覚とアクセルコントロールで間一髪交わして過ぎ去っていった。アフロ「やばかっやな今のは・・・」彼の名をアフロと言う。パワラン学園の1年生である。学生服を見て気がついたアロハーがバイクに近寄り止まるように左手で合図を出した。「ん? 何だろう」アフロは少し戸惑ったものの前からハーレーに関心を持っていた彼は、素直に指示に従いバイクを道路の脇に止めた。「お前、危なかったな今の」「しかしあれをやり過ごすとは大したテクだぜ」「あの状況であの切り返しが出来るとは、人並み外れたバランス感覚と強靭な手首のスナップ力が無いと無理だな」 そう見ず知らずのライダーから言われて、少し気分のいいアフロ。「ま〜大した事ないさ」そう言いながらも自慢げにふんずりかえっているその態度はさっきの見たのかよ、凄かっただろ!としっかりアピールしていた。「いや〜凄い凄い!」アロハーに持ち上げられすっかり上機嫌になった高校生は、バイクから降りアロハーのハーレーに見入りだした。「おっさんのバイクもすげ〜よ ハーレーじゃん」とアフロは自分が以前から熱烈なハーレーファンだという事を語り出した。「そんなにハーレーが好きなのか〜」「ハーレー欲しいか?」アロハーの唐突な質問に驚いたアフロは、「欲しいさ〜、まさか俺にくれるなんていう訳ないよな、おっさん」ヨダレを出しながら答えた。「よし! お前に俺のハーレーくれてやる!」とアロハーはいともあっさりと答えた。「へ? まじかよ?」アフロの目が点になっている。「但し一つだけ条件がある」とアロハーは言うと、自分がアフロと同じ高校の野球部の監督である事を伝え次のような事を彼に言った。「お前、うちの野球部の4軍に入んな! 明日、入部届け出しにこい その時ハーレーくれてやる!」「おいおい、マジかよ そんなんでハーレーくれるのなら早速明日 入部届け出しにしくぜ〜!」そう言い残し喜び勇んでアフロは去っていった。次の日入部届けをアロハーに手渡したアフロが変わりに受け取ったハーレーは、プラモデルだった!「あのおやじ〜ぶっ殺してやる」とつぶやきながら部室を後にするアフロであった。ゆう「おい、今すれ違ったの、確か1年のアフロじゃないか?」アフロは1年だがその悪ぶりは、既に2年の悪どもにも目を付けられていた。「ちょっと待て」としんへいが何かメモ帳らしき物を学ランの内ポケットから取り出した。表紙に《しんへいタイマンリスト》と書かれたそのメモ帳を開き「こいつだな」とリストを指差した。そこには絶対ぶっとばすぞ度=Aでアフロの名が記載されていた。その下には()でぶっ飛ばしたい理由も書かれていた。(理由:俺より2枚目なのが気にいらね〜)身長174a 体重56`髪型は短めで立たせている。ちなみに色は黒に水色のメッシュ。顔つきはジャニーズ系で・・・しんへいが吉本系なのは言うまでも無い。ヨウ「でも、あいつ何でプラモの箱なんか持っていたんだ?」ゆう「ひょっとして、お宅なのか?」しんへい「俺はお宅なんかじゃ〜ね〜ぞ! アニメイトなんか行かね〜ぞ!」ガンク「誰もお前の事言ってないんだってば」ほっとしたしんへいは心の中で密かにつぶやいた以下しんへいHPの日記≪戯言≫ より抜粋まあ、俺の部屋にはアニメの主題歌とかキャラクターソングとかサントラとかドラマCDしか無いワケですよ。(全部言った) で、まあそんな俺が「今MD聴いてる」って言うと必ず返ってくる言葉が「何のアニソン?」とかそんなのばっかりなんですよ。 そんでもって、そんな俺が今「Wonderful Life」を聴いてるワケです。 もしかして逆に退かれてる?イヤ、俺だって普通のJ-POPとか洋楽とかそういうのも聴きたいワケなんですよ。 だって最近いい曲多いでしょ? さっきだってオレンジレンジの「ミチシルベ 〜a road home〜」を聴いていたのです。 上戸彩の「愛のために。」とかも結構気に入ってるし。 ですから、私はそんなにオタクじゃないんです。 確かにポスターはありますけど。 フィギュアもありますけど。 まあ、そこで落ち着いて考えてみました。 で、1つの結論に辿り着きました。 そうなんです。 結局何かの主題しんへいHPの日記≪戯言≫ より抜粋つづく
第3章まず、ここ↓のしんへいの04.2.24(Tue)の日記を読んで下さいhttp://www12.ocn.ne.jp/~pps/04_02.html↑ちゃんと読んできましたか?ちゃんと読まないとここからの話についていけませんよ!ちゃんと読んだ人だけこれより先を読んで下さい。しんへいは、いつものようにアニメイトに来ていた。(↑のリンク先を参照)そしてCDショップ(某SS堂)で目的を達成した彼は、また例の駐車場の方に歩いていった。どうやらここでケンカ相手を見つけるのが彼の日課のようである。そこにバイクに乗ったアフロがやって来た!アフロはバイクを駐車場に止め、しんへいが居る方向に歩いて来た。「やべっ、アフロじゃん、こんなとこ見られたらまずいな」とっさに身を隠すしんへいだが・・・ガチャ〜ン!慌てて後ろに止めていたチャリにつまずいた。その音に気がついたアフロが「あんた2学のしんへいだろ?」と声をかけた。しんへい「そう言うお前は1学のアフロだろ?」しんへい「丁度いい機会だ。俺とタイマン勝負しろ!」アフロ「それはいいけどさ〜 あんたが踏んずけちゃってる"それ" 良いのかい? 大事な物じゃないのか?」アフロにそう言われ、しんへいは自分の足元を確認した。あ〜〜〜〜!先ほどアニメイトで購入した買い物袋を見事に踏んずけていた。しんへいは、慌てて袋から中身を取り出し、TVアニメ「光と水のダフネ」オープニングテーマ「明日のBlue wing」のCDに傷が入っていないかチェックしだした。「明日のBlue wing・・・か」アフロがそのCDのタイトルに気がつき「あんたアニメお宅なのか?」としんへいに言った。「いや・・、これは・・・、その・・・」としんへいは言葉に詰まりながらも「実は妹に頼まれてだな・・・」などと言ってごまかし、大事そうにカバンに収め「んなぁこたぁ、どうでもいいんだよ! 覚悟しなアフロ!」そう言ってアフロに殴りかかった。アフロも1学きっての悪だけあって、さすがにしんへいのパンチは空をきる。しんへいの凄まじいパンチのラッシュを巧みな身のこなしで交わしていくアフロと、その時アフロの学ランの内ポケットから何かがポロリと落ちた地面に落ちたそれにしんへいの目がいった。それはしんへいが↑のリンク先で探していたあの「ながされて藍蘭島」のドラマCDだった。(↑のリンク先を読んでない人にはなんの話しだか分からないと思います。)おお〜〜〜!「ながされて藍蘭島」じゃないか!!「お前どこでこれを仕入れた!」根っからのアニメソング好きなしんへいは我を忘れ、アフロに問いかけた。アフロ「さっき隣町のレコード屋にあったぞ」しんへい「なに〜! そんなとこにあったのか!!」アフロ「何だ、あんたも好きなのかこれ?」しんへい「好きなんてもんじゃね〜! こいつを手に入れないと俺は一生後悔する!」「? アフロ、お前も好きなのか? アニメソング」アフロ「実は・・・・かなり好きだな。 ヒカルの碁は全曲持っている」しんへい「あのシリーズは確かにイイ! テニプリも俺は好きだな〜」アフロ「テニプリも確かにイイよな〜」しんへい「だろ! 他にもアニメソングってイイ曲一杯あるよな!」アフロ「うんうん!」この二人がその後、こ1時間ぐらいアニメソングの話題で盛り上がった事は言うまでも無い。それから二人はアフロのバイクで場所を移動しカラオケ屋で2人してアニメソングを3時間程歌いまくっていた。つづく
第4章今日は試験前とあって授業は半日で部活も無くアロハーは愛車ハーレーで自宅に帰宅しようと校庭の駐車場に歩いて来た。「ない! ない! ない!」「俺のハーレーがな〜〜〜〜い!」学園の裏庭の人目の付かない焼却場にアフロがバイクでやってきた。そこにはしんへいがいつもいるという事をアフロは聞いていた。アフロ「しんさん、これいいだろ〜」(例の件いらい二人は根っからの仲良しになっている)アフロがしんへいに見せたそれはアロハーのハーレーだった。しんへい「ハーレーじゃん! どうしたそれ?」アフロ「アロハーのハーレー、ちょいと拝借してきたぜ!」アフロは拝借したハーレーで今からドライブに行くと言い「しんさん後ろに乗るか?」としんへいを誘った。アフロは後ろにしんへいを乗っけると学園から抜け出しハーレーの乗り心地に酔いしれるかのように遠くへ遠くへとライディングを楽しんだ。気がついたらあたり一面田園で向こうには見事な紅葉の山々が連なって見える。アフロ「しんさん、ここどこだろ?」しんへい「ん〜、分かんね〜な〜。かなり田舎まできちゃったみたいだな〜」それにしても空気が綺麗で二人の気分も最高だった。アフロ「お! あそこに高校があるじゃん! 寄ってみよう」しんへい「おう! 適当な奴見つけてぶん殴って帰るか〜!」アフロはその高校のグランド脇にハーレーを止めグランドのどてにしんへいと座り込み様子を伺っていた。おい!なんか臭うぞ!しんへい「なんだ〜、ここって農業高校じゃないのか?」そのグランドの脇には幾つもの肥溜めが掘られていた。監督〜〜! 大変です〜! 落多君がまた肥溜めにおちちゃってます〜〜!アフロ「おいおい! マジかよ。農業高校って恐ろしい所なんだな」アフロとしんへいは自分達の学園とはあまりにも環境が異なるこの農業高校の様子に興味心身で様子を観察していた。彼らが見ているこの高校はパワ・アンビシャスを読んでいる読者さんなら既にお気ずきかとも思いますが、農業大縁高校である。そのグラウンドのマウンドでピッチングをしている一人の選手にしんへいの目がいった。しんへい「アフロ、あのピッチャーの球って結構速いんじゃないのか?」アフロ「そうか〜? 対した事無いんじゃないか 俺の方が早い!」しんへい「へ? お前野球やるのか?」アフロ「あの球は見るところ時速145kmってとこかな〜。」「俺なら時速180kmは軽い」しんへい「うっそだろ〜 プロでも160出ないんだぞ」アフロ「いや俺はこの前、首都高(都市高速)で180km出した。」どうやら話が噛み合っていないようだ。そんな二人の足元にグラインドから飛んできたボールが転がってきた。「すいませ〜ん!そのボール投げてくれませんか?」野球部の物がアフロ達にそう呼びかけた。アフロがそのボールを手に取り大きく振りかぶったそのモーションは・・・しんへいの目に未だにハッキリと焼きついているあのアロハーのあの時のモーションそのものだった!これだけ大胆に振りかぶると得られる反動は大きい。がその反面、バランスを損ないコントロールが全く定まらなくなる。しかし、アロハーもそうだったがアフロもまた同じように全く微動だにしないそのモーションは、ずば抜けたバランスとそれを支える強靭な下半身がなせる技である。アフロの手からリリースされたその球はビシィ!という凄まじい音がした。その音は彼のスナップ力の強さを物語っている。アフロが投げた球はマウンドのピッチャー「真弓 猛」のグラブ目掛けて一直線に突き刺さった。グラウンドにいたチームの全員がその球に驚いたのは言うまでもないがだれよりも一番驚いているのは横にいたしんへいであった。「な、なんでお前が、あのアロハーと全く同じ球を投げる!」つづく
第5章「何て威力のある球だ・・・」アフロが投じた球を受け取った真弓はしばらく手のシビレが引かなかった。「真弓、お前の知り合いかか?」セカンドを守っていた窪田 孔明が真弓に声をかけた。しかし真弓には全く心あたりが無い。「誰なんだろう、只者じゃなさそうだな」窪田はそう言うとアフロ達がいるどてに歩いていった。「君達どこの高校生だ?」窪田の呼びかけにしんへいが「パワラン学園だが、何か?」と答えた。パワラン学園・・・去年の夏、全国制覇したあの名門校か!窪田は驚いた。窪田「パワラン学園か。 知ってるよ今年も秋の地方大会で優勝したようだね」「うちも秋の大会は優勝した。来年の選抜ではひょっとしたら顔を合わせるかも知れないね」野球に詳しくないしんへいは窪田の言ってる事がチンプンカンプンだったが「おう!、その時顔合わせたらボコボコにしてくれよう!」などと訳の分からない言葉を返した。「面白い事をいうな〜君は」窪田は軽く受け流したがその言葉を対戦した時には試合でボコボコにやっつけてくれようと解釈ししんへいとアフロの事をパワラン学園の野球部のメンバーだと思い込んだ。(一応野球部ではあるのだろうけど・・・)「そうかパワラン学園の野球部のメンバーか!」そして窪田は先ほど凄い球を投げて見せたアフロの事をパワラン野球部のエースピッチャーCOORS(1軍)だとてっきり思い込んだこいつがCOORSか・・・よし丁度いい機会だ一つお手並み拝見といくか。「せっかくここまで来たんだ。俺と勝負していかないか!」窪田はアフロに勝負を挑んだ。しんへい「アフロ、お前タイマン申し込まれてんじゃねぇ〜のか?」アフロ「これタイマンじゃねぇ〜だろ、野球対決だろ」しんへいはアフロが野球出来るのか少し疑問があった。「お前、野球出来るのかよ?」「まぁ〜ピッチングだけならな」そう言うとアフロはグランドに降りていった。「石垣キャッチャー頼む!」窪田はそう言ってバッターボックスに立った。そしてアフロはマウンドに・・・窪田「来い! COORS! 全力で投げてみろ!」アフロは何の事だか???でCOORSって変化球でも投げろって言ってるのかと思った。アフロ「COORSは投げられん!」窪田もアフロの返答に「???」だった。また会話が噛み合っていないようだ・・・何を言ってるんだろうあいつは・・・心理作戦か?まあいい。とにかく奴は直球で勝負してくる。タイミングさえ捕らえれば・・・アフロはマウンド上でまた大きく振りかぶり足を高々と蹴り上げ全身のバネを使って思いっきり投げた!ボゴ!と言う鈍い音がグラウンドに響いた窪田のバットは空を切りキャッチャーの石垣がその球をキャッチしきれずキャッチャーマスクにボールがめり込んでいた。アフロが投げた球は窪田が出したバットの手前から一気にホップしていった。そのホップにキャッチャーの石垣が反応しきれなかったのだ。石垣は完全に気を失いぶっ倒れていた。「大丈夫か石垣!」ナインが心配して集まってきた。「なんかやばそうだな〜」そう思ったアフロはしんへいを呼びハーレーに跨った。「悪り〜な! そっちから勝負を申し込んだんだ! 俺しらないよ〜! ば〜い!」アフロはそう言い残し爆音を残し農業大縁を後にした。「誰か今の球、スピードガンで計測したか?」フェンスの裏でスピードガンを持っていた部員が答えた「155kmです!!」な、なに〜〜!つづく
第6章緑が続く田舎道1台のハーレーが砂煙を舞い上げながら爆走してくるアフロとしんへいである。しんへいは気になってた事をアフロに聞く為、バイクを止める様にアフロに言った。小川が流れる田んぼ道で二人はバイクから降りた。「アフロお前どうやってあのフォームを身に着けたんだ?」しんへいはそれがどうしても知りたかった。アフロは地べたに座り込み、遠方にそびえる紅葉の山々を眺めながら「あれは俺が6歳ぐらいだったかな〜」自分が幼かった頃の話を懐かしむように語り始めた。彼は幼少のころ大好きな父親から誕生日にグローブを買ってもらった。その日以来、彼は学校から帰るなり毎日、毎日近くの公園で日が暮れてボールが見えなくなるまで壁投げをやっていた。そんなある日いつものように壁投げをしていたアフロにバイクに乗ったおじさんが話かけてきた。アフロはそのおじさんが良くここを通るたびにバイクを止め壁投げをしている自分を見ている事を知っていた。「坊主、ボール投げが好きなんだな」おじさんはそう言ってアフロの頭をポンポンと叩いた。そしてアフロのボールを手に取ると壁に向かってボールを投げて見せた。その大胆なフォームにアフロの目は釘付けになった。「スッゲー!」アフロはおじさんにもう一回、もう一回と何度もおねだりしてそのピッチングフォームを見せてもらった。そしておじさんは「このフォーム、そんなに気に入ったか?」とアフロに聞いた。アフロは「僕にその投げ方教えてくれよ〜」とおじさんにお願いしだした。おじさんはとても優しく手取り足取りでその投げ方を教えてくれた。しかし、そう簡単に真似出来る程あまくは無い。アフロは何度もバランスを崩し地べたにはいつくばった。それでもアフロは何度も何度もおじさんに教えてもらう事をあきらめなかった。「お! そろそろ俺も行かなくちゃ」おじさんが言うとアフロはどこに?と尋ねた。「球場さ、今から家に帰ってテレビを見ててご覧。俺が投げるから」そう彼はプロ野球の現役ピッチャーだった。彼のピッチングはとことんストレートにこだわったピッチングでどんな場面でも決して変化球で勝負する事を嫌った。あくまで強気で直球勝負!それが彼の信念でもあった。その直球にこだわった男が作り上げた独特のピッチングフォーム。それはあの沢村栄治を思わせる大胆なフォームで彼は年間奪三振の記録保持者でもあった。アフロはテレビに映った背番号14のあのおじさんのピッチングに食い入るように見入っていた。「スゲー! また三振だ〜!」その日からアフロはその背番号14をテレビで見るのが楽しみで毎日壁投げから帰ってくるとテレビの前で奪三振ショーを観戦していた。しかしある日突然その背番号14が引退してしまったのだ。直球にこだわるばかりに彼の肩は普通のピッチャよりも寿命が短かった。あの大胆なフォームをもうテレビで見れないと思うとアフロは悲しかった。それからアフロは来る日も来る日も彼からおそわったフォームを練習した。自分なりに体を鍛え、どうやったらあの大胆なフォームで豪快な球を投げれるのか。あの時おじさんが教えてくれた色んな事を彼は一つも忘れる事無く脳裏に叩き込んでいた。あの時自分の為に見せてくれたあの1球を自分も投げたい。その思いは彼が高校に入っても忘れなかった。アフロは今でもその公園であの壁に向かい一人で投げていたのだ。その話を聞いていたしんへいは、自分にもあの時のアロハーが投げたそれがアフロの話とダブってきてなんだか胸が熱くなってきた。「お前いまでも練習しているんだ。」そう言うとしんへいは明日から俺にその球を受けさせろと言い出した。「さっきのキャッチャーはお前の球を補給出来なかったろ」「多分お前の投げるその球はかなり完成の域に来ているんじゃないのか?」「それを補給することは容易ではない事ぐらい素人の俺でも見てて分かった」「だが俺は、その球をこの手でまず掴みたい!」「どんな球なのか、俺のこの手で掴んで確かめたい!」「明日から4軍のグラウンドで二人で練習しよう!」しんへいは自分でもなんでこんなマジな事を言っているのだろうと不思議に思えた。しかし、その思いはまぎれも無く本物だった。最後にしんへいが聞いた。「そのおじさんが乗ってたバイクってひょっとしてハーレーだったのか?」アフロ「そうなんだ。あれがハーレーだと知ったのは高校になってからだったけど」「それいらいハーレーは俺の憧れの乗り物さ!」しんへい「その背番号14って選手、名前はなんて言うんだ?」アフロ「ワイハー」二人の頭にはある人物の顔が浮かんだ。「まさかあいつじゃないよな〜!!」その頃アロハーはアフロが置いていった暴走族仕様のバイクで世間のひんしゅくを買いながら家路に向かっていた。あのやろ〜! 覚えてやがれよ〜〜!つづく
第7章駅の改札口と言えば昔は駅員さんが切符を一枚一枚切っていた物だが、今ではそういった風景を見ることも殆ど無い。機械化され改札ゲートなるものがその駅員さんの役目を担っているのだがそう言った機械には人の能力に劣った欠点というのも付き物である。地下鉄改札ゲートも大人が子供の切符で通ってもゲートは見分ける事が出来ずそのまま問題なく通過出来てしまう。駅員さんがそう言った不正行為はチェックして機械の欠点を補っている訳だがそう言った機械化の抜け穴を付いて悪事を働く者達がいる。今日も3人の悪党がこの改札口で何やらやらかそうとしている。ゆう、ヨウ、ガンクの3人は最近この地下鉄改札口で盗塁ごっこをやって無銭乗車を楽しんでいた。「今の所、俺が8割、ガンクが7割、そしてヨウがビリッケツの4割だな」ゆうがそう言ってるのは彼らの無銭乗車成功率の事で、彼らは駅員の目を盗んで改札ゲートをスライディングでくぐり抜けるという盗塁ならぬ「盗改」をゲームとして楽しんでいた。「じゃあまず俺からいくぜ!」ゆうが駅員の監視がそれた一瞬の隙を付いてゲートに滑り込む!ゲートを難なくくぐり抜けたゆうは向こう側でセーフのジェスチャーで自分の成功をアピールしている。駅員は全く気がついた様子もなく再びゲートの監視を続ける。次はどうやらガンクの番らしい。駅員の元におばさんが何やら話しかけにいった。「よし! 絶好のチャンスだ!」そう判断したガンクはゲート目掛けて一気に突っ込む。セーフ!ゲートの向こう側でゆうとガンクが一緒にジェスチャーでアピールする。残るはヨウだ。ヨウの成功率が彼らよりも極端に低いのは何を隠そうヨウは、ビビリヤなのである。いつもチャンスを慎重に見計らってスタートするのだがそのビビリヤの特質上どうしても戸惑いが生じスタートがワンテンポ遅れてしまう。まぁ〜それだけ気が弱いのだけれど3人の中で一番お人よしで優しい奴でもある訳だ。ヨウがドキドキしながら駅員の様子を伺っていた。駅員が何か探しに奥の方に向かっていった。「今だ!」そう判断したヨウだが「いやもしあの駅員が振り返ったらどうしよう・・・」いつもの様にためらいが生じた。「いや、でもチャンスは今しかない」そう自分に言い聞かせヨウは意を決してゲートに滑り込んだ!とその時駅員が振り返ってゲートを見ていた!「こら〜、またお前達か〜!」「ヤバイ!ずらかるぞ!」3人は勢い良く駅から飛び出し一目散と逃げていった。「これでおれが単独盗札トップ維持だな」ゆうがそう言うと「お前は本当にとろいんだから〜」とガンクがヨウに突っ込みヨウは少しふてくされ気味にあたりを見渡していた。「あれ、ZETじゃないか?」新聞の束をチャリの荷台にくくり付け汗を流して新聞を配っているZETをヨウが発見した。ZETは昨年父親がリストラにあい、今までのような収入を得られなくなって仕方なく家計を助ける為にアルバイトをやっていた。そんな中でも野球を続けていきたかった彼は、何とか短時間で高収入のアルバイトをと思い、学園では禁じられていた水商売のアルバイトを隠れてやっていた時期があった。しかし、その事が学園にバレテしまい1ヶ月の定額処分と1軍から外され4軍落ちとなっていた。その後は、学校でも認められている新聞配達のアルバイトを朝夕やっているのだが2時間はゆうにかかる配達業務を毎日こなしていたので部活にも殆ど姿を現さなくなっていた。そんなZETの姿を3人はじっと見つめるだけで誰も声を掛けようとはしなかった。次の日の放課後ゆう、ヨウ、ガンクの3人はいつものごとく4軍の部室でマージャンをやっていたが、アフロとしんへいがユニホームに着替えているのを見て驚いた。ゆう「お前ら何を始めるんだ?」しんへい「野球に決まってるだろ、この格好で卓球はしないだろうが!」ゆう「まぁ〜それはそうだが・・・何でまた今更?」ヨウ「練習なんてしたって試合に出してもらえないよ。ここは4軍だぜ!」しんへい「別に試合に出る為じゃない。野球がしたいだけだ!」ガンク「試合に出れなきゃ野球やってる意味ないじゃん!」アフロ「意味はある」「なんの意味が?」3人が声をそろえて言った。しんへい「俺達には目標がある!」「なんの目標?」しんへい「うん〜とだな〜。何て言えばいいのかな〜」「男の目標だ!」「なにその男の目標ってさ?」「うるせ〜な! なんでもいいだろ! とにかくやりたい事があるんだよ!」「アフロ行くぞ!」二人はグラウンドに出て行った。何だろね〜。 あいつらのやりたい事って?アフロとしんへいがピッチングをやっているところに3人はマージャンテーブルをベンチに持ち出しジャンを打ちながら眺めていた。どうにも気になって仕方がないらしい。しんへいはアフロの球を何度も何度も顔面にくらい、いくらマスクをしているとは言えその衝撃はなみならぬものである。波の人間ならとっくに気絶している所だろう。しかし、日ごろからケンカで打たれなれしているしんへいは決して止めようとはせずアフロに球を投げさせ続けた。「おいおい! しんへい、大丈夫か〜」「いい加減あきらめろ! アフロの球は素人がそう簡単に受けとめられるものじゃない」「しかし、すげ〜なアフロがあんな球を投げるなんて、驚きだぜ!」「しんへい、それ以上バカになったらどうするんだ、やめとけって!」3人のやじが飛ぶ中、アフロとしんへいは黙々と練習を続けていた。その様子を離れたところからじっと眺めている人物が二人。アロハーとはなである。はなは4軍の打撃コーチで社会人野球のトップチームの4番を打っていた程の実力者でもあった。年はアロハーよりもずっと若く25歳。指導者にあこがれていた彼は、現役の座をあっさりと捨てこのチームのコーチとして一昨年やってきた。はな「アロハーさん、あのアフロという1年生。まるであなたの現役時代の生き写しの様なピッチングをしますね」「いつ教えたんですか?」アロハー「俺も彼のフォームを見て驚いたよ。そして思い出した。俺が現役最後の年、ふとした事で一人の少年と出会った事を・・・」「その少年にわたしのピッチングを教えたんだ」「6歳ぐらいだったけどな。あの時の坊主があいつだったとは・・・」はな「へ〜 そうだったんですか〜」「そのアフロも凄いんですが、私的にはそれを受けているしんへいの方に興味が有りますね」アロハー「ああ、あいつも面白い奴だ。不良達とケンカしてるところを前に1度見たんだが」「腕力、反射神経、動体視力、体重移動どれも抜群だ。パンチを繰り出す時の腰のひねりは素晴らしいものがあったぞ」はな「そうでしょう、こうして彼の動きを見てるだけで、わたしにもそれが分かります」「アロハーさん、しんへいを私に任せてくれませんか?」アロハー「いいよ、バッティングは俺より君の方が専門だしね」「但し3月までに甲子園で通用するバッターに仕上げてくれ」はな「あと4ヶ月ですかw 相変わらず無茶な事をいいますね〜」アロハー「まぁ彼は体も出来ているし、素質も十分持っている。不可能ではないだろう」はな「ですね〜。 まぁやってみますか」アロハー「それと、他の連中もそろそろエンジン掛けてやってくれ」はな「あいつらですねw。 分かりました。久しぶりにもんでやるか〜」そう言ってバットを片手にはなが4軍グラウンドに向かって歩き出した。
第8章ゆう、ヨウ、ガンク3人は1軍のレギュラーとして活躍していたがちょっとした事がきっかけでレギュラー落ちしその事でやけを起こしたり悪の道に走ったりして結局今の4軍に留まっているのだが決して技術的に1軍レギュラー達よりも劣っている訳ではない。むしろ1軍レギュラー郡よりも優れた才能を持っているものもいる。だが彼らには何かが欠けていた。その何かはプレーヤーにとって1番大事な物だったりする。指導者は多くの優れたプレーヤー達を振るいにかけその中から優秀な選手をかき集め強いチームを創っていく事が出来る。しかしアロハーはその振るいに落とされた選手達に自分に欠けている物、それが何なのか、その事に気づかせ、それを克服させてあげる事こそ真の指導者ではないのかと考えている。はなもそう言ったアロハーの指導方針に共感する部分が多くだからこそ4軍のコーチを引き受けている訳でもある。普段はおだやかでにこやかなはなのだが時に彼は修羅と化す彼のあだ名は「修羅のはな」グラウンドにやって来たはなはバットを持ってバッターボックスに入った。そして後ろで構えているしんへいに「補給はもういいよ、そこで私のバッティングを良く見ておきなさい」と言いマウンドのアフロに内角高めボール一つ内に外したボール球を投げるように指示した。アフロが投げた球は、はなが指示したそこえドンピチャリで入って来た。「絶妙なコントロールだな」はなはその球を綺麗にジャストミートした。3塁ベンチに向けて痛烈なライナーが走った。ベンチでジャンをしていたゆうの椅子にそれがヒットした。「ひえ〜!」思わずゆうが声を出した。「しんへい、今のコースどんなにジャストミートしても今のようにファールにしかならない、覚えておきなさい」「へい」としんへいが答えると、アフロにもう1球今のコースに投げる様に指示した。「やべ」ゆうが身の危険を感じたのかグラブを手に取った。3塁ベンチに向けてまたライナーが走った。今度は明らかにゆうの体目掛けて飛んでくる。後ろ目でゆうはグラブを差し出しその打球をキャッチした。「ゆう! 相変わらず器用だな そんな姿勢でキャッチするとは」「じゃあ、これはどうかな?」そう言うとはなは、アフロにさっきよりもボール一つ内側の内角高めのストライクボールを要求しそれを3塁ベース上に打ち返した。ゆうは無意識に打球に反応し、気がついたら3塁ベース上にダイビングし打球をキャッチしていた。「ゆう! お前のポジションはそこじゃないよね! お前のポジションはここだ!」今度はショートの位置にライナーが飛んだ。打球をキャッチしたゆうは、まんまとグラウンド内の自分のポジションに引きずり出された。ゆうは打球を取るたびに1塁に送球しようと無意識に体が動くのだがそこには誰もいない。「面白くねぇ〜な〜」そう言うとゆうはヨウにファーストに入るように言った。「仕方ないな〜」と言いながらもヨウはファーストに入る。アフロははなが指示するコースへ的確にボールを投げる。それを芸術的バッティングで打ち返すはな。そのバッティングをしんへいは目を光らせて観察していた。「この人のバッティングすげ〜、全く無駄がない・・・」「ゆう! これはどうだ!」次第にはなの打球は威力を増しきわどい所に飛んでくる。「おりゃ〜!」掛け声と共に打球に突っ込むゆう。次第にゆうも熱くなっていき「かかってこいや〜!」とはなを挑発する。はなも次第に本性を現してくる。そう、修羅のはなと言われる由縁はここにある。おらおらおら! ゆう! もっと気合入れて突っ込まんかい〜!なんじゃい! はな! その程度の打球しか打てんのかい!「てめぇ〜! 俺に口答えするなんざ1000年は早いんだよ! これでどうじゃい!」凄まじいノックと罵声(ばせい)の応酬が始まった。その様子を後ろで見ていたしんへいにその男達の熱き鼓動が伝わらない訳がない。はながアフロの球を打つ度に「うおりゃ〜〜〜〜! でや〜〜〜〜〜!」と訳の分からない掛け声というのか、雄叫びをしんへいも放っていた。しんへいは今までに味わった事のない、何かがこみ上げてきていた。いつも一人でタイマンを張ってきた彼が今、「チーム」という形で一つの事を皆で共有して楽しむという事の素晴らしさを体全身で感じている。ベンチに一人取り残されたガンクももう我慢の限界。グラブを片手に自分のポジションであるセカンドに向かって飛び出した。「来たなガンク! お前も成敗してくれる!」はなは6、4、3、と叫びショートに向けて打球を放った。ゆうがキャッチするとすかさずセカンドのガンクへガンクは2塁ベースに走りこむと華麗にジャンピンスローで1塁へ決まったぜ! 観たかこの華麗なジョンピンスロー!甘いぞ! ガンク! これはどうだ〜!今度は4、6、3と次第に内野手の連携プレー中心のノックに移っていった。そしてはなの罵声がこだまする。おめぇ〜ら、レギューラー外されたぐらいで、すねてんじゃねぇ〜よ!試合で観客に自分のプレーを観てもらわないと野球を楽しめなねぇ〜のかよ!野球ってのは仲間と一緒にプレイする、それが一番楽しいんじゃ〜ねぇ〜かよ!それで十分じゃねぇ〜か!その仲間の中心にいたアフロもまた熱いものを全身で感じていた。野球ってこんなに楽しいものだったのか・・・みなの心はいま正に野球のとりこになっていた。しかし何故かヨウだけはいまいち燃えていなかった。それはサードからの送球が返ってこないからである。ヨウはショートのゆうセカンドのガンクそしてサードのZETからの返球をずっとファーストで受けてきた。今ポッカリあいたサードの空間がヨウにはたまらなく寂しく感じていた。つづく
<甲子園編1>桜が満開に咲き乱れ甲子園のグラウンドにも高校球児達の熱きプレイが乱舞する2005年4月○日 春の甲子園大会準決勝農業大縁高校 対 パワラン学園高校実況「本日は大会準決勝とあって早朝からここ甲子園には大勢の観客が押し寄せ既にスタンドは満席状態となっております!準決勝第1試合を戦うのは、農場大縁高校とパワラン学園高校。本日の解説にはストリート学園元監督のカビルさんにお越し頂いております。カビルさん先ほど両チームのチームオーダーを見ましたが驚きましたね〜」カビル「いや、驚いたなんてもんじゃないですよ。パワラン学園はこの大事な準決勝に全く無名の選手達をいきなり投与してきた訳ですからね〜どうも4軍チームみたいですよ」実況「パワラン学園は先の3回戦も3軍チームを使って見事勝ち上がって来たわけですがそれにしてもここにきて今度は4軍ですよ」カビル「まぁ〜昨年の夏の大会優勝校のパワランですからね、ただの4軍ではないのでしょうが〜」アロハーはこの試合、野球部顧問としてベンチインしはなを監督としてベンチインさせた。「今日の試合、全ての指揮は君に任した。俺は気楽に観戦させてもらうよ」「ありがとうございます!」と、はなは一礼するとベンチにいるナインに「てめぇ〜ら! 気合入れて行くんだぞ〜!」と渇を飛ばした。実況「その4軍ナインが今グラウンドに元気よく散っていきました。」実況「いきなり甲子園の準決勝の舞台でしかもスタンドは満席、これでは彼らも緊張して・・・」しんへい「おめぇ〜〜〜〜〜ら! いくどぉ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!どりゃぁ〜〜〜〜〜〜〜〜!!」ナイン「ウぉ〜〜〜〜りャアぁ〜〜〜〜〜〜!!!!!」実況「い、いや全く緊張は感じられません・・・・それどころか・・・彼らの掛け声に満員のスタンドが一瞬にして静まり返ってしまいました。凄まじい気合です。」4軍の連中にはこの満員の観客など全く視野に入っていなかった。彼らはただこの甲子園のグラウンドでおもいっきり自分達の持てる力を爆発させたかった。そのエネルギーが今一気に大甲子園のグラウンドに放たれその迫力に観客はみな声を失っていた。観客が選手を飲み込む事はこの甲子園では良くある事だが、今のそれは選手が観客を完全に飲み込んでいた。実況「マウンドに上がっているピッチャーアフロ君ですが、これまでの公式戦にも彼が登板した記録は全くありません。本人にとってはこれが初の公式戦でのマウンドになる訳ですが、一体どのようなピ、・・・・ピピピピピピピピピピピピピピピピピ」ズバ〜〜〜ン!ズバ〜〜〜ン!ズバ〜〜〜ン!「す、凄い剛速球です・・・!!!」アフロの投球を目の当たりにしたスタンドは更に静まり返った。水を打ったような静けさとは、まさにこの事を言うのだろう。その中でズバ〜ンと言うボールがミットに食い込む豪快な音だけが響く。実況「本人は軽く投げてるように見えますが、それでも150kmはゆうに出ています!凄い投手が今、甲子園のマウンドに立っています!!」おい何でもいい、この4軍チームの資料を片っ端から探しだせ!放送局の裏方はこの4軍チームの登場で慌しく人が動き出した。実況「只今この4軍チームの資料が入って来ました!これは公式試合ではありませんが、この練習試合の資料をみますと・・・・な、なんとこのピッチャーのアフロ君は1試合で18奪三振を記録しています!しかもその対戦校は去年の春の甲子園優勝校の***高校ですよカビルさん。」カビル「・・・・・」「ちょ、ちょっと待って下さい・・・」おい君、この資料本当に間違いないのか?アナウンサーはその資料の内容をとても真実として受け止める事が出来なかった。実況「え〜、え〜とですね・・・」「驚くのはそれだけではありません・・・何とこの試合アフロ君は完全試合をやっていますし・・・4番のしんへい君は6打席6ホーマー打っていますし・・・3番のZET君、5番のReven君、6番のヨウ君もそれぞれ3ホーマー打ってますし・・・その試合のチーム打率が7割で・・・練習試合でコールドは摘要されてなく試合結果は9回で0対34って、これってマジ・・・?!」静まり返ってたスタンドが一気に頂点の歓声で湧き上がった。つづく
甲子園編2試合開始のサイレンともに審判がプレイを告げ大会準決勝が始まった。実況「ああ〜と!これは一体どういう事でしょう!パワラン学園捕手のしんへい君がいきなり立ち上がった。先頭バッターに対していきなり敬遠です!!試合開始でいきなり敬遠とは!こんな光景私は始めて見ました!!解説のカビルさん、これは一体・・・」カビル「いや〜私にも全く理解出来ません。なんの為の敬遠なのか、全く意味の無い敬遠としか思えませんが・・・」それは野球史上に於いて誰も見たことが無かった先頭バッター敬遠であった。「フォアボール」審判の指示で先頭バッター 矢上は難なく1塁に出塁。迎えるバッターは2番 南実況「ああ〜と! パワランバッテリーまたしても敬遠の構えです!カビルさん、パワラン学園のはな監督は一体何を考えているのでしょうか?」カビル「いや〜理解に苦しみます・・・」アフロはキャッチボールをするかのように立ち上がったしんへいに4球ボールを投げた。いきなりランナー1〜2塁の先制のチャンスが転がり込んだ農業大縁。ここで迎えるバッターは今大会屈指のスラッガー窪田。窪田はあの日以来、アフロと再び対決する事を心の底から楽しみにしていた。窪田「そうか、アフロよ。 そんなに俺と対決したかったのか。臨む所だ、全力でかかってこい!!」おお〜と3番の窪田君も敬遠だ〜!!窪田「へ? 何で・・・ 何でだよ〜〜! 俺をバカにしているのかよ〜!!」1回表からいきなりノーアウト満塁のピンチを迎えたパワラン学園。次のバッターはこれまた強打者4番 嵐ノーアウト満塁だと言うのにパワランナインには全く焦りが見られない。それどころかこの状況を楽しんでいるかのような余裕すら感じられた。しんへい「へへへ、はなの兄貴よ、おもろいで〜、おもしろずぎるこの作戦さぁ〜! いくよ! 逝っちゃうよ!!」「おう!」とか「ブイブイ言わしたろか〜!」と言う声が守っているナイン達から返ってきた。つづく
第9章新聞屋の朝は早い早朝4時頃から販売店に配達員が集まってくる。そこでまず、その日の折込チラシを閉じ自分の配達分をまとめそれを各自が配達に使うバイクや自転車の荷台にくくり付け4時半ぐらいから皆一斉に販売店を飛び出していく。大学生などが学費を稼ぐ為にアルバイトでやっていたりするケースが多く、中にはZETのような高校生もいたりもする。ZETは皆と一緒に販売店から配達に出て行った。10月ともなると日が上る前の早朝は、かなり冷え込んで吐く息も白く濁る。ZETはチャリを一生懸命こいで一軒一軒の郵便受けに新聞を入れていく。150件分の配達を受け持っていた。静まりかえった薄暗い住宅街に、「ハァハァハァ」とZETの吐息が響き渡る。と、その時お〜い!ZET〜!後ろから聞きなれた声がする。チャリを止めて振り返って見るとヨウがチャリでこっちに向かってくる。「おつかれ〜!」そうZETに声を掛けると、ヨウはZETの配達に付き合うと言い出した。いつも一人で孤独に配達していたZETは、ヨウの姿を見ただけで何だか嬉しくなってきた。二人は色んな話をしながら一緒に配達をしていった。最後の1件に新聞を入れ終わり、近くにあった自動販売機で二人はHotコーヒーを買い、手頃な高さのブロック塀に腰掛けてまた話出した。ヨウは昨日、久々にゆうやガンク等と練習に打ち込んだ話をした。「いいな〜 俺も皆と一緒に野球したいよな〜」ZETがポツリとつぶやいた。ヨウはZETに何かして上げたかった。今自分が出来る事を一生懸命考えた。そして、あくる日からZETの新聞配達にランニングで付き合う事に決めた。そのうちZETも自転車をやめヨウと一緒にランニングで新聞を配るようになった。距離にして5km程だろうか、毎朝の二人の配達ランニングは、確実にヨウとZETの下半身を強靭なものへと鍛え上げていった。〜パワラン学園野球部1軍グラウンド〜この学園には野球部のグラウンドが4つあり、それぞれの軍チームが専用で使用している。しかしナイター設備がひかれているのは、ここの1軍グラウンドだけであった。今日も日が暮れるまで1軍メンバーが練習に汗を流していた。やがて練習が終わり、道具を片付けていたゴズィラの元にヨウがやって来た。「久しぶりだな〜!」ヨウに気が付いたゴズィラが先に声をかけた。ヨウはある事をゴズィラに相談した。「よし! 話は分かった。俺の方からドリックコーチにお願いしといてあげるよ」ゴズィラのその言葉にヨウは「やっぱ頼りになるよゴズィは〜、ありがとう!」と礼を言うとグラウンドから去っていった。ゴズィラは同級仲間からゴズィと呼ばれ1〜4軍の皆からしたわれ、もっとも信頼されている1軍キャプテンである。次の日4軍グラウンドでは新聞配達を済ませたZETが遅ればせながら練習に出てきた。しかし、せっかく出てきても、練習出来る時間は30分程でしかなかった。そこでヨウが4軍の練習が終わったZETを1軍グラウンドに連れて行った。1軍チームも既に練習を終えていてグラウンドには人影は無かったが、ナイターの電光は消される事無く煌々と付いたままだった。「何でナイター設備消してないんだろ?」ZETは不思議に思ったが、ヨウの説明を聞いてそれが自分の為にゴズィがドリックコーチに頼んでくれた事だと知った。ZETは嬉しかった。自分が練習出来るようにと、そこまでしてくれるコーチとヨウ、ゴズィにありがとうの気持ちで心が一杯だった。目から涙も少しこぼれていた。そこへゴズィがバットを持ってやって来た。「ZET! 久しぶりだな〜 腕は鈍っていないか? 俺がノックしてやるよ!」そう言ってヨウをファーストにおいて、サードのZETに向けてノックを打ち出した。「ヘイヘイヘイ!」「さぁ〜来い!」「もういっちょう!」3人の楽しそうな声がひと気の無い1軍グラウンドに明るくこだまする。後日からその居残りナイター練習に、ゆうやガンク、しんへい、アフロ達も参加するようになった事は言うまでも無い。つづく
甲子園編3春の選抜大会準決勝、第1試合1回の表から大変な事になっています!実況アナウンサーの声がテレビから聞こえてくる。おいおい、どうしたんだ!繁華街のお店に設置されたテレビモニターに野球ファンが群がってくる。先頭打者敬遠!しかも3連続敬遠・・・塁はあっというまにランナーで埋まった。バッターボックスにはノーアウト満塁で4番の嵐がバッターボックスに向かう。前代未聞のこの場面、どう考えても理解出来ない作戦。しかし、誰が見ても、確かに分かる事が一つだけあった。それは・・・打席に入ったバッターが完全に切れている!ノーアウトで自分の前のバッターを全て敬遠で歩かせ、あえて満塁にして4番を迎えるといったあまりにも無礼なバッテリーに嵐は激怒していた。「舐めたまねしやがって! かかって来い!!」チームの4番を任される男にとって、これ以上の屈辱は無い。実況「さあマウンドのアフロ君、キャッチャーのサインに対し首を立てに振って大きく振りかぶった! 今度は勝負だ〜〜!!」ビシィという音と共にアフロの手を離れたボールは、バッターに近づくにつれグングンと伸びてくる。嵐は思いっきり打ちにでた。しかし、嵐が出したバットの10cm程上をボールはホップしてミットに収まった。タイミングも完全に振り遅れている。ズバ〜ンという音と共にアルプス・スタンドが一斉に沸いた。ストラィ〜〜〜ク!しんへいが返球の祭、ニヤリとマスクの中で笑った。アフロもニヤリと微笑んだ。第2球同じモーションから放たれた球は先ほどより多少球威が無いもののそれでも十分早い!嵐はその球にドンピシャのタイミングでバットを振り出した。先ほど明らかにボールの下を振りぬいた嵐は、ボールの伸びを計算に入れてバットを合わせにいった。が、しかし・・・先ほど程、ボールが伸びない?!嵐のバットは明らかにボールの上を叩いた。ボテボテの当たりだ。サードのZETがそれを予測していたかの様に猛然とダッシュしていた。ボールを素手で取ったZETは至近距離にも関わらずサイドスローでクイックに早い返球でホームを刺す。1アウト!キャッチャーのしんへいがファーストへ弾丸ライナーで2アウト!キャッチしたヨウがすかさずセカンドへ送球して3アウト目を狙う!しかし、2塁ランナーが3塁ベースを蹴りホーム突進を伺っている。2塁にはショートのゆうがベースカバーに既に入ってる。2塁でアウトにしてもその間にランナーがホームを踏めば先取点を取られる。と、その時!実況「ああ〜〜! 2塁に送球しようとしたヨウ君、2塁ランナー(3塁でホームを狙ってるランナーの事)の動きに目を取られボールがすっぽ抜けた〜〜〜!!それを見ていた2塁ランナーがゆうゆうホ〜〜〜ムイ、イ、イ、・・・・・いやアウト?!です2塁ランナーホームでタッチアウトです!!!!なんで?」3アウト!!!!実況「トリプルプレーです!!ノーアウト満塁があっと言う間に3アウトです!しかし解説のカビルさん、今ファーストのヨウ君の手からボールがすっぽ抜けましたよね?何故そのボールがホームに?」カビル「いや〜驚きました! スローを見ながら今の一連のプレーを解説したいと思います。まずピッチャーのアフロ君は第1球目、かなりホップの効いたボールを投げましたよね。その球のかなり下を振りぬいたバッター嵐君は、2球目ではそのホップを予測しながらバットを合わせにいったのでしょうが、この2球目は1球目程球威がなく、その為ホップも殆どしなかった。それで嵐君は思わずボールの上ッ面を叩いてしまったのですが、サードのZET君が既にダッシュしていた所を見るとこれはバッテリーの作戦だったのでしょう。そしてホームで1アウトを取り、ファーストで2アウト、問題は次です。ヨウ君がボールを2塁に投げようとした訳ですが、ボールがすっぽ抜け。1〜2塁間の真ん中あたりにふら〜とボールが浮いた。しかし、セカンドのガンク君がそのボールに合わせて走りこんでいた。ジャンプ一番、素手でボールをキャッチし、そのまま空中でジャンピングスロー!矢のような送球がキャッチャーしんへい君のミットに収まり、ランナータッチで3アウト!ヨウ君はわざとボールをすっぽ抜けさせ、ランナーをホームに突入させた訳ですよ。このタイミングで2塁に投げていても間違いなくセーフだったでしょう。このすっぽ抜けは実はセカンド、ガンク君へのトリッキーなパスボールだった訳です。いや〜〜〜〜〜凄い!!!バッテリーを含めた内野手全員のチームプレイで作り上げた驚くべきトリプルプレー!!一つ間違えば大量得点に繋がるこんなプレーを、作戦として出したベンチのはな監督は、なんと大胆な・・・選手に対し絶対の信頼を持っていなければ、こんなプレーを作戦として出せませんよ」実況「なんというチームでしょう〜〜!!」それにしてもピッチャーアフロがこの初回にまともに投げた球は、たったの2球だけ。この「敬遠」というプレイを以外な方向で作戦に取り入れたはな監督の真の狙いは・・・つづく
第10章「お〜い! しんへい〜! ちょっと来い!」アロハーが練習中のしんへいを呼び寄せた。「親分なんどすか?」最近すっかり野球に溶け込んでいる彼は監督の事をいつもそう呼びはなコーチの事を「兄貴」と呼んでいるが、ここは決して「組」ではない。アロハーはしんへいに4軍チームのキャプテンをやるように告げた。「わたくしめが、キ、キパテン、いやキャプテンですか?」今までそう言った役とは全く無縁だった彼だけに、完璧、驚き顔で引きつっていた。しばらく「キャプテン、キャプテン、この俺がキャプテン翼、キャプテン・ハーロック」と小声でブツブツつぶやいていたが「するって〜と、俺、若頭(わかがしら)でやすか?」などと訳の分からない事を言い返してきた。「若頭でも何でも良い、とにかく今日からお前がこのチームをまとめて、皆を引っ張っていってくれ」アロハーのその言葉にしんへいは「オッス!」と力一杯返事した。アロハー「で早速だが、キャプテンのしんへい君に早速お願いしたい事がある」しんへい「へい」アロハー「4軍には今、何人練習に参加している?」しんへい「え〜と、俺とアフロとゆう、ヨウ、ガンクに〜とZETも最近出てきたし・・・6人でしょうか」アロハー「野球は何人でするか知ってるか?」しんへい「へ? 6人じゃないんっすか? いや〜6人でしょう! 6人いれば十分だって!だってうちには6人しかいないじゃないですか!」アロハー「いや野球は9人でやるものだ他にもメンバーは居るんだが、出てきていないだけなんだ〜」アロハーはそう言うと他のメンバーの掘り起こしをしんへいに言い渡した。〜4軍部室〜しんへい「おいゆう、4軍には後だれだれがいるんだ?」ゆう「RevenとBIGと・・・え〜と」しんへい「ちょっと待て! ひょっとしてそいつら外人か?」ゆう「いや純国産だけどさ〜、確かこの2人は今アメリカに輸出してて日本には居ないんじゃなかったっけ」実はパワラン学園はアメリカに姉妹校があって、そこのハイスクールと親善を深める為に毎年交換学生をお互いに出していた。今年は野球部からも1軍にいたRevenとBIGが4月からその姉妹校であるカリフォルニア・ハイ・スクールにホームスティで滞在していた。しんへい「じゃあ無理じゃん、そいつらを練習に引っ張りだすのは。 俺は悟空みたいに空を飛べんし、宇宙戦艦ヤマトのようにワープも出きんし、ましてドラえもんのようにポケットからどこでもドア〜〜なんて出せないって」ゆう「う〜ん、流石アニメお宅だな。例えが凄い」しんへい「他には居ないのか? 身近な日本にさ〜」ゆう「後3人いたな〜。トンマと紅葉とブルース・リーかな〜」しんへい「よし! じゃあ早速その3人に合って練習に引っ張り出すかぁ!」しんへいはまずトンマに目を付けた。トンマは2年生で、1年の時は1軍でプレイをしていた。野球部一小柄な彼だが、敏速で素早しっこく、猿のように木を登る。だからと言って決してサル顔な訳ではない。彼が何故4軍落ちしたかと言うと・・・・1軍でトンマが野球に打ち込んでいた時、毎日熱心に練習を見に来る可愛い女の子がいた。トンマはどうもその子に一目ぼれしたらしい!しかし、その子のお目当てがサードを守っていたイヅナであると知った彼は、失意のどん底に突き落とされた。それ以来トンマは再起不能となり練習にも全く出てこなくなって、今では4軍に籍だけ残っている。ゆうからその話を聞いたしんへいは、そのトンマに1通のお手紙をしたためていた。〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜始めましてトンマさん、私はチビが大好きです。ドラゴンボールZのご飯ちゃんやクリりんもチビだけどカッコイイしドカベンの里中ちゃんだってチビだけどカッコイイ。ちびまる子も大好きで毎週日曜日は欠かさず見ています。あ、ちなみにハナオくんは私の好みじゃりません。そんな私は野球部一チビなトンマさんがグラウンド狭しと駆け回る姿をいつも影で応援しています。早く練習に出てきて下さい。宮間夕菜似のしん子より〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜しんへい「よし、出来た! 後はこれをトンマの靴箱に入れておけば良しっと」次の日から元気一杯に4軍グラウンドを駆け回るトンマがいた・・・・つづく
甲子園編4満員のスタンドは1回の表のパワラン学園の度肝を抜くプレイで割れんばかりの歓声が沸き起こっていた。その中で守備に散っていく農業大縁高校のナイン達の足取りは重たかった。パワラン学園は後攻でありながらも、その守備において農業大縁高校のナインに痛烈な先制パンチを食らわした。戦いは先手必勝、猛将はな監督の攻めは初回表から更に裏の攻撃へと続く。農業大縁高校の先発ピッチャーはキャプテンの窪田でキャッチャーは石垣。3回戦まではエースの真弓が先発で、リリーフで窪田がマウンドに上がるといったパターンだったが、この試合ではエースを温存し可能な限り窪田で引っ張る作戦にでた。ピッチングの内容は変則投法を武器とする真弓の方が明らかに上で窪田が通用しない時には直ぐに真弓がマウンドに上がれるようにベンチ横で投げ込みをやっていた。パワラン学園1回裏の攻撃先頭打者トンマ(センター)トンマは窪田の初球を捕らえ1塁に出塁すると自慢の足ですかさず2塁を落とす。2番ゆうが絶妙なセーフティーバントでトンマを3塁に送ると共に自分も1塁に出塁。ゆうも盗塁で2塁を盗みランナー2塁、3塁とする。ノーアウト2、3塁パワラン学園の1、2番の足に引っかき回された窪田。先のアフロの剛速球を見ているだけに、この試合における1点の重みを誰よりも理解していた彼の顔には既に焦りが出ていた。迎えるバッターは3番ZET犠牲フライでも1点、ワンヒットで2点しかもその後には4、5番が構えている。農業大縁のベンチは動かざるおえなかった。ピッチャー交代が告げられ窪田は1アウトも取ることなく後輩の真弓にマウンドを託した。窪田「すまん、真弓・・・」真弓「気にしない♪ 気にしない♪」窪田とは対照的な笑顔で答える真弓だったが顔は引きつっていた。無理もないだろうこのピンチの場面でしかも初回リリーフ、1年の真弓にはまだ心の準備が出来ていなかった。窪田はそのまま本来のポジションであるセカンドに入り後ろから真弓に激を飛ばす。窪田「真弓〜! 頼んだぞ〜!」実況「ついに出ました〜!今大会話題の投手、真弓君。彼は1回戦から3回戦まで21イニング無失点を現在続けています解説のカビルさん、初回から真弓君が出てきましたよ」カビル「そうですね〜 引っ張り出されたって所ですかねしかし彼の変則投法は今大会自責点0と今だ打ち崩されていないのですが、何分腕に掛かる負担が大きいようで、7回以降はリリーフで窪田君が投げて来たわけですですからこのロングリリーフが後半にどういった影響を与えるか、ちょっと心配ですね」実況「さぁ〜! その真弓君、今独特のフォームから第1球を投げた〜!」ストラィ〜ク!ZET「これがアーチエッジSって奴か〜 ビデオで見るよりも変化が大きく感じるな」第2球キャッチャー石垣が要求した球はインコースに外したボール球、しかしその球が甘く入ってきた。石垣「しまった!」ZETはその甘く入ったストレートを見逃す事無く豪快に振りぬく。カキ〜ンという金属音と共に観客席から「うお〜〜!」という歓声が上がった。打球はレフトスタンド目掛けてグングン伸びていく。歓声が「あああ〜〜〜〜」という何とも締りの無いものと変わっていった。レフト線の審判からファールが告げられた。キャッチャー石垣が慌ててマウンドに駆け寄る。真弓はボールが打ち込まれたレフトスタンドをじっと見ていた。「真弓大丈夫か?」石垣の呼びかけにハッと真弓が振り返った。石垣「1塁側の応援席を見てみろ」石垣に言われ応援席に目をやった真弓の目に、学校の田んぼでとれた大きな大根を両手に一生懸命応援している大応援団が映った。その中に練習中いつも肥え溜めに落ちていた落多君の姿を見つけた真弓は、「あ、落多君だ! 今日は彼も落ちる心配は無いですよね」と石垣に笑顔で応えた。真弓のその言葉に思わず「プッ」と石垣が噴出した。真弓「いや〜それにしても凄い打球でしたね〜 今ので目が覚めましたよ♪ もう大丈夫!」その返事を聞いて安心した石垣は真弓の肩をポンポンと叩いて戻っていった。石垣はチーム1冷静な男で彼の存在が有ってこそ1年の真弓でも今日まで伸び伸びとピッチングをやって来れた。その石垣のフォローですっかり平常心を取り戻した真弓は自慢の魔球でZETを三振に撃ち取った。しかしワンアウトランナー2,3塁ピンチはまだ続くつづく
第11章アメリカ・カリフォルニア州ここには有名なメジャーリーグの球場が幾つかある。中でもカリフォルニアの青い空の下、メジャーリーグで最も美しいと言われる球場それがロサンゼルスドジャースの本拠地ドジャースタジアムである。野茂、石井の日本人投手が所属し活躍している。そのすぐそばにパワラン学園姉妹校のカリフォルニア・ハイスクールが存在する。今日は州のハイスクールのリーグ優勝をかけた最終戦がこのドジャースタジアムで行われていた。そのグランドには日本からやって来たジャパニーズBOYが2人観客の熱い声援を受けていた。3番レフトBIG君〜アナウンスと共に打席に入ったのはパワラン学園1年生のBIGRevenと共に交換留学生としてこのチームに入ってはや10ヶ月。BIGは痛烈なライナーで2塁ランナーをホームに帰す。リーグ打点トップは伊達じゃない続く4番はモーガン・ルイス軽々と場外に打球を運び2ランホーマーでリーグ本塁打単独トップを維持。5番ライトReven君〜ルイスに負けじとアベックホームラン。ガムを噛んですっかり大リーガー気分でホームに戻ってスタンドに拳を突き刺し自分をアピール。ルイスに2本差でリーグ本塁打2位に付けているパワーヒッター。この試合6対4でリーグ優勝を達成したカリフォルニア・ハイスクールその祝賀会の席でBIGとReven、そしてルイスの3人がバーベキューの串を片手になにやら話をしていた。ルイス「今日でリーグも終わって、もう君達と一緒にプレイすることも無くなるんだな。少し寂しいよ」Reven「そうだな〜来週には俺とBIGは日本に返る。でもルイス、君の事は忘れないよ」BIG「今度はさ、それぞれの国を代表して、ライバルとして対戦する日が来るかもしれないね〜」ルイス「そうだな。その時は誰が1番ホームランを打つか勝負しよう!」Reven「じゃあその日の為に、カンパ〜イといきますか〜」A championship is celebrated and a toast is given! (優勝を祝して乾杯!)3人は片手に持っていたシャンパングラスを高くかざしてグラスを合わせた。そして1週間後、RevenとBIGがパワラン学園4軍グラウンドに姿を現した。アメリカに行く前は2人ともマジメな模範学生だったが、帰国した2人のその風貌は・・・しんへい「おい! だれだ〜このモヒカン頭とレゲエ野郎は〜!」BIGは金髪のモヒカンで髪を立たせ、肩にはラジカセを担いで腰でラップを刻み、Revenは三つ網ジャラジャラのレゲエずらにグラサンかけてガムをクチャクチャ(注:レゲエずらとは巨人のローズ選手のような髪を細かくみつ網にしてバラつかせているヘヤースタイル)帰国後すぐに1軍復帰も視野に入れていたドリックコーチだったが、彼らの余りにも変わり果てた姿を見て即行で4軍残留が決まったようだ。しかし、4軍メンバーには暖かく受け入れられた事は言うまでもない。春の選抜甲子園が開催される直前の2月の下旬のことであった。つづく
甲子園編5パワラン学園4番キャッチャー〜!しんへい君〜〜!甲子園球場にうぐいす嬢の透き通ったアナウンスが流れた。打席に向かうしんへいワンアウトランナー2、3塁男の血が騒ぐバットを持つ手にも力が入るボックスに入ったしんへいの目は獲物を捕らえたライオンのように鋭くただ一点だけを睨み付けていた。その視線の先には真弓がいた。しんへい「真弓ちゃん可愛そうだが逝ってもらいます!」フォアボール!ランナー1塁!「俺は逝って良しって事デツカ?(゚Д゚)ノ」逝かされたのはしんへいの方だった。1塁が空いている訳で、まぁ、当然と言えば当然の選択であろう。農業大縁は4番しんへいを歩かせ満塁策にでた。そして5番Revenとの勝負ワンアウト満塁ベンチのはな監督がサインを送り「攻撃」を仕掛けた。実況「さぁ〜! ピッチャー真弓君、強打者Reven君に対し変則モーションから〜あ、あっ〜〜〜!!!3塁ランナートンマ君がスタートを切っている!!スクイズだ〜!」トンマは先のZETの打席で真弓のフォームを完全に盗んでいた。 もちろん2塁1塁ランナーも一斉に走り出した!!実況「3塁ランナートンマ君は絶妙なスタートを切っているぞ〜!」しかし、このトンマの動きを冷静に見抜いていた男がいた。キャッチャーの石垣だ。石垣は真弓がボールを手離す一瞬前にボックスから大きく体を3塁側に投げ出し、そのとっさの動きを見て真弓はボールを手離す瞬間にコースを変えていた。真弓の投げたボールはストライクゾーンを大きく外れ左バッターのRevenの外側に大きく曲がっていった。そう、3塁側に。実況「バッターReven君バットが届かない〜!その下をトンマ君が頭から突っ込んだ〜!キャッチャー石垣君も殆ど同時に上からタッチに行った〜!」ホームベース上はトンマのヘッドスライディングで土煙が舞い、その一瞬の出来事にスタンドが全体があっけに取られ同時に審判のコールを固唾を呑んで聞き入った。そして静まり返った甲子園に審判のコールが響きわたった。アウト〜〜〜!!!石垣のミットがトンマの手をホーム手前でしっかりとブロックしていた。このキャッチャー石垣、あなどれない奴その後Revenは真弓の魔球に討ち取られ三振3アウトチェンジつづく
甲子園編6実況「解説のカビルさん、ここまでの両校の内容、如何でしょう?」カビル「そうですね、まず1回表のパワラン学園の前代未聞の先頭バッター敬遠から始まったこの試合ですが、その作戦の意図する物が何だったのか、今のパワラン学園の裏の攻撃にその答えが出ていたように思えます。」確かに、1回表の3者連続敬遠のあとのトリプルプレーで出鼻を叩かれた農業大縁、その動揺の隙をついたパワランの足を使った攻撃。結果としてはキャッチャー石垣の「冷静な護り」で得点こそ出来なかったが、それでもエース真弓を初回から引っ張り出したという事実はこの試合のこれからの展開に於いて重要なポイントとなっていった。「アフロ、この回から全快だ!」はなの言葉を受けアフロが大観衆の待つ甲子園のマウンドに向かった。アフロは自慢の剛速球で農業大縁のバッターを次から次えと三振で討ち取っていった。3者連続三球三振!その豪快なピッチングに再び観客は度肝を抜かれた。「お〜いアフロ! ちょっと来て見ろ」パワラン学園4軍グラウンドでしんへいを相手に投げ込みをやっていたアフロをアロハーが呼んだ。「ストレートには2つの種類があるって知ってるか?」「へ? そうなん?」アロハーは、アフロにストレートでもボールの「握り」を変えるだけで球質とスピードが変わる事を教えた。いわゆる「4シーム」と「2シーム」である。一般にストレートと呼ばれているものは4シームで、日本でのストレートと言えばおお旨4シームであり、4シームが伸びのある直球(ホップする球)なのに対し、2シームは沈んだりわずかに動いたりするので直球とは言わずMFBの1つとして扱われるいわゆる「動く直球」である。 シームとは縫い目のことで、4シームならボールが1回転すると縫い目(横方向)は4回見え、 2シームはボールが1回転すると横方向の縫い目は2回見える。そういった事から縫い目の見える数をとって名前が付けられている。この2シームは、握りのわずかな違いや力の入れ具合で変化の仕方が変わるナチュラルなボールでもある。また、4シームはホップ回転により球速が増す反面、「軽い球」となりあたると良く飛ぶ。それに対し2シームは回転が少ない為、球速は多少落ちるがその分「重い球」となる。「あとチェンジアップとカーブも覚えておくんだ」そういった球を有効に使う事で更にピッチングでストレートが生きてくると言う事をアフロは学んだ。甲子園のスコアボードにどんどん三振の山が築かれていくアフロの球は回を増すごとにスピードを増していき、打席に立ったバッター達は、その全力投球に全力のスイングで立ち向かっていく。まるでオールスター戦でも観ているかのような力と力のぶつかり合いが観ている者たちの心を熱く躍らせた。アフロは5回までに去年、東北・ダルビッシュ投手が宮城県大会準決勝で記録した11打席連続三振を上回る12打席連続三振を記録していた。対する農業大縁の真弓も変則投法を駆使して7回まで0対0で踏ん張っている。そして迎えた7回裏パワラン学園の攻撃打順は3番ZETからの好打順つづく
甲子園編77回裏パワラン学園攻撃実況「さぁ〜0対0で迎えた7回裏のパワラン学園の攻撃先頭バッターは3番ZET君!」真弓の魔球にこの回まで全く手が出なかったパワラン打線しかしその真弓のピッチングに変化がでだしたのがこの回だった。彼の魔球は浮き上がる変化球アンダースロー投法をさらに変則なフォームに改造し、思いっきり伸ばした両腕の反動を使い軸足の右足を軸として腰にかけて上半身をひねり、遠心力をフルに使って投げ出されるその球には腰の回転で生じる回転と腕の振りから生じる回転の2つの回転が加わってバッターの手元から浮き上がる変化を起こす、言わゆるジャイロボールの一種である。しかしその変則フォームの腕に掛かる負担は大きい。初回をたったの2球で3アウトをとり、2回は3者三球三振で9球で片付けたアフロとは対照的に強力打線を相手に慎重な攻めで応戦してきた真弓&石垣バッテリーマウンド上の真弓は既に肩で息をしていた。「ハァ、ハァ、ハァ、」打順は既に3順目に入っておりパワラン打線の各バッター達は2順目から徹底したダウンスイングで真弓の魔球を捉らえ初めていた。浮き上がってくる球筋に対し「線」でバットを合わせにいくそれにはダウンスイングが最も適していた。普通ダウンスイングと言っても、ボールを捉える時点では殆どレベル(平行)状態で心持ちダウンで振りぬく。バットはやはりボールに対し平行に合わせにいってこそ当たりやすい。広角打者やアベレージヒッターなどは殆どレベルスイングなのがそれを証明している。しかし今パワラン打線がやっているそれは手元で浮き上がってくる球を明らかに上から叩きにいくまさにその名の通りのダウンスイングで、今打席に入ってるZETも前の打席ではそれで真弓の魔球を捉えていた。しかしそのスイングでは打球は内野グランドに弾かれる為、農業大縁の鉄壁の内野守備にことごとくその打球を阻まれていた。実況「ZET君打った〜〜!」 痛烈な打球が1〜2間を走る!その打球に敏感に反応したセカンド窪田がダイビングで打球に飛び込む窪田は素早く立ち上がり1塁に送球アウト〜〜〜!窪田のファインプレーに観衆が沸く。窪田のユニホームは全身泥だらけで、彼がこの試合でどれだけこのようなファインプレーで真弓を支えてきたかを物語っていた。窪田「流石だな、2順目あたりから痛烈な打球ばかりだ〜 大越!この回も気合入れて守っていくぞ〜!」「おう!」内野守備の要、ショート大越も窪田以上に全身泥だらけだった。いや彼らだけではないファースト嵐も、サード神野も既に胸の高校名が確認出来ない程彼らのユニフォームは甲子園の土の色に染まっていた。このような真弓の魔球に対し徹底したダウンスイングで迎え撃つパワラン打線にあって、一人だけアッパースイングで立ち向かうバッターがいた。今バッターボックスに向かっている4番しんへいである。つづく
12章パワラン学園野球部4軍グランド外野には10m程のフェンスが高々と張り巡らされいる。その一角にセミが1匹とまっていた。2月下旬にセミがいるのか?良く見るとそれはセミではなくトンマだった。トンマ「しんへい〜! いつでもいいで〜 かかって来い!」グランドのバッターボックスにはしんへいがバットを持って構えている。マウンドにはバッティングマシンが設置されしんへいに向けて時速140kmの球が勢いよく飛び出す。シュパ〜ン!「これはどうだ〜!」しんへいがそう叫びながらバットを振り出す。快音と共に外野フェンスめがけて痛烈な弾丸ライナーが飛び交う。フェンスに張り付いているトンマが、トカゲのようにその打球に向かってガサガサと移動する。見ようによっては壁を這いずるゴキブリの様でもある。トンマは素早く打球に追いつきグラブでそれをキャッチする。しんへい「く〜〜! またしても取られてしもうた〜〜〜! 悔し〜〜〜〜!」トンマのそのフェンスを這うプレイは実際の試合ではまず使えない。単に面白がってしんへいと遊んでいるだけである。この時、しんへいははなコーチの指導でホームランバッターとしての才能を既に開花させていた。トンマ「へ! ざまあ〜みろ! お前の打球なんてチョロイもんさ!」しんへい「か〜〜〜〜! てめぁ〜トンマ! 今度はどうじゃ〜〜!」カキ〜ン!そんな不真面目な練習をやっていたしんへいに遠くから標準を合わせているスナイパーの影が・・・・バシュ!しんへいの足元に土煙が舞い上がった!とっさの出来事だったがその弾丸を確認したしんへいは打ってきた方向を確認した。グランドのベンチの影にスナイパーは潜んでいた。「しんへい! 覚悟しな!」バシュ! バシュ! バシュ! バシュ! バシュ! バシュ! バシュ! バシュ! バシュ!しんへいに無数の弾丸が放たれたカン! カン! カン! カン! カン! カン! カン! カン! カン!持っていたバットでその弾丸を見事全弾弾き返した!「ほ〜う なかなかやるな」そう言ってベンチの影からアロハーが出てきた。「親分! なぜわたしを狙撃する?」「狙撃? 良く見てみろ」しんへいの足元に転がっている弾丸は硬球だった。そしてアロハーが引っ張りだしたそれは、バルカン砲のようにバレルを無数に束ねた銃身を持つバッティングマシンだった。スゲ〜〜!ナインが一斉にそのマシンに集まってきた。Reven「本場アメリカでもこんなすげ〜マシン無かったぞ〜!」発射口が8個、円状に束になって付いているそれはアロハーが自作したオリジナル・バッティングマシンで、その束になった発射口がバルカン砲のように高速回転し次々とボールを連射する。最大で24連射可能らしい。アフロ「おお〜〜! スゲ〜! これバイクのエンジンじゃねぇ〜か!」アロハー「そうさ、このマシンは4気等水冷の750ccエンジンで動くしろものさ」アフロ「お! マフラーも付いてるじゃん!??? しかしこのマフラーといいエンジンといい、どことなく見覚えがあるなぁ・・・・・・って! これ俺のバイクのエンジンじゃねぇ〜かよ!!!」つづく
第13章アロハー「さっきのはバッテリーモードで打ったから差ほどスピードも出てなかったけどよ」そう言うとアロハーはイグニッション・キーを廻した。リュルルンと軽快にセルが廻りバリバリバリ〜!とけたたましい爆音がグランドに響いた。「おいReven、バッターボックスに立ってみろ!」アロハーに言われてRevenがバットを持ってボックスで構えた。Reven「面白そうジャン♪」アロハー「このスルットルを廻すとだな〜」爆音はさらに音を上げスピードメーターの針が140kmを振った。「そして発射ボタンを押す!」バシュン!バシュン!バシュン!バシュン!バシュン!バシュン!バシュン!バシュン!バシュン!バシュン!回転する発射口から10発の硬球が勢い良く飛び出した。バシ!ボコ!ベキ!ボコ!バシ!ベキ!ボコ!バシ!ボコ!バシ!「なんじゃこりゃぁ〜!」とRevenが叫びながらその場に崩れ落ちた。壮絶なレゲエデカの殉職シーンであった。アロハー「あ! ワリ〜 標準が合ってないわコレ」アロハー「よ〜し! 標準は調整した。BIGボックスに入ってみろ!」BIG「お、俺っすか?! ・・・」アロハー「いやなのか? 入らないと打つぞ!」だれか早くこいつを止めないと・・・「ひぇ〜!助けてくれ〜!」BIGが逃走した。アロハー「逃がしゃしないぜ!」バシュン!バシュン!バシュン!バシュン!バシュン!バシュン!バシュン!バシュン!バシュン!バシュン!バシ!ボコ!ベキ!ボコ!バシ!ベキ!ボコ!バシ!ボコ!バシ!モヒカン刑事殉職。アロハー「良し! 標準はバッチしだ!」「さて、じゃあ早速これを使って〜」と周りを見ると誰もいないではないか。身の危険を感じみんなベンチ裏に姿を潜めていた。アロハー「何してるんだそんな所で?!」「あぶねぇ〜じゃないか! 早くその物騒な物をしまいなさい!」ガンクが皆を代表して拡声器を片手に説得交渉に入った。アロハー「心配すんなって! これはしんへい君用に作った物だから」なんだそうなのか、とみんな安心してしんへいを差し出した。しんへい「おい! 待て! そんなに簡単に仲間を売るんじゃないって! 俺はまだ死にたくない〜!」「じゃ〜ヘルメットをちゃんと付けなきゃね」そう言ってヨウがヘルメットをかぶらせた。そこへはながやって来た。しんへい「あ、兄貴〜! 助けてくれ〜! 俺は今から公開処刑される〜」はな「お! アロハーさん完成したんですね。 ピッチング・マシンガン!」しんへい「・・・あんたもグルかい!」アロハー「今、試し撃ちも終わって、バッチしさ!2人程犠牲者がでたが開発に犠牲は付き物さ」しんへい「そういうものなのか?」アロハー「それはそうと、はな! 例の「ブツ」は持ってきたか?」しんへい「更に手りゅう弾でも出す気デツカ(゚Д゚)ノ?・・・」「これでしょ」はなは持ってきた箱の中からそれを取り出して見せた。それは真っ赤な硬球しんへい「それはひょっとして爆発したりしシマツカ(゚Д゚)ノ?」はな「安心しろ、そういった物ではない。赤く塗られただけのただの硬球だから」アロハーはその真っ赤な硬球を手にしてしんへいに言った「この赤い球を1球マシンに入れる連続して10球ボールが飛び出すがこの赤球がいつ飛び出すかは俺にもわからん」(注:10球の中に1球だけ赤球が有るという事)しんへい「って、まさか・・・そのいつ飛び出すか分からん赤球を打てと?!」アロハー「まぁ〜そう言う事だいくぞ〜!」つづく
甲子園編8アッパースイングアッパースイングはメジャーリーガーのマグワイヤーや西武のカブレラに代表されるスイング法で大アーチ特大ホームランを生み出す打法であるが、小、中学野球指導者の中にはアッパースイングは駄目というコーチも多い。しかし、それは難しいので今は駄目という事であって、バッティング理論の原点はアッパーでありアッパーこそ理想的な打撃方法だと言う指導者も多い。また、このスイングは強靭な腹筋、背筋、腕力、上半身、下半身が必要で筋骨隆々、逆三角形体型の体格の選手でなければその本来のメリットを十分に発揮出来ない為、日本では意外と指導者に嫌われる打ち方だったりもする。しんへいの非凡な素質を見抜いていたはなは、しんへいにこのアッパースイングを叩き込んだ。そして、この試合でも・・・浮き上がる真弓の変化球をアッパーで迎え撃つと言う事は球筋に対し「線」でバットを合わせるのでは無く、「点」でボールを捉えなくてはいけない。スピードもある真弓の変化球を「点」で捉える事は容易な事ではない。2打席目はあえなく空振りで終わってしまっていた。しかし・・・真弓との3打席目の対決回も7回裏とあってこれが最後の対決になるかもしれない。しんへいは、真弓をじっと睨みつけバットを立て、「うおりゃ〜〜〜〜!」と自分自身に気合を入れた。キャッチャーの石垣がその気迫の凄まじさに一瞬たじろぐ程であった。「凄い気迫だ・・・」「真弓、初球は打ち気を誘って高めにボールになる変化球だ。こい!」マウンドの真弓にサインを出した。ボ〜〜〜ル!ワンボール、しんへいはピクリとも反応しない。「誘いに乗らないか・・・じゃあ次はインコース高めに入ってくるストライクだ、低めは禁物だぞ!」アッパースイング打者に対し低めはすくい上げられて簡単にスタンドに持っていかれる。バッテリーは徹底した高めで攻めていく。ストラィ〜〜〜〜ク!ワンストライク、ワンボール既に真弓の体力は限界に達していたしかし・・・バックで精一杯、激を飛ばしてくれるナインの声がプレイが彼の力投を支えた。3球目石垣の構えるコースに、まだこんな球が投げれるのかと思う程威力のある球が外角高めコース一杯に浮き上がりながら入ってきた。しかし、その球はしんへいが待っていた球だった!彼はあえて高めに的を絞っていた。アロハー「しんへい〜! いくぞ〜!」バシュン!バシュン!バシュン!バシュン!バシュン!バシュン!バシュン!バシュン!カキ〜ン!アロハー「残念でした〜! 今打ったのは白球ね」後ろを見ると今飛んできた赤球が転がっていた。既にバックネット前には500球ほどボールが転がっていた。しんへいの手には豆が出き、それが潰れグローブが赤く染まっていた。しんへい「もう一回!」毎日、毎日その赤球を打ち返す為に何千回とスイングした。彼のスイング速度は既に1流の領域に達していた。そして遂に、見事に赤球をオーバーフェンスさせた。(来た!)しんへいは真弓が投げた3球目の低めから浮き上がってくる出鼻にポイントを合わせ大きくステッフをく踏み込み豪快に振りぬいた!!ジャストミートしたその打球は、まるでピンポン球のように弾け飛び、あっという間に場外まで飛んでその姿を消した。それは、かつて誰も見たことが無いほど、高く、遠く、そして豪快なホームランだった。うおォォォォォォォォォォォォォ!!!そのあまりに豪快なスイングと打球にアルプス・スタンドが大歓声で揺れた。バットを投げ捨てたしんへいは、その大歓声の中を右手を高々と掲げダイヤモンドを1週しベンチに戻ってみんなからボコボコにされた。いや祝福しているのだろうが・・・どうみてもボコボコにされていた。0が並ぶスコアボードに貴重な1点が刻まれた。7回終わってパワラン学園 1対0 農業大縁つづく
甲子園編97回にしんへいから特大の1発を浴びた真弓だったが、それ以降も彼はバックに支えられ最後まで投げきった。そして9回表の農業大縁の最後の攻撃を迎えていた。マウンド上のアフロは1番2番を仕留め、3番の窪田も2−3と追い込んでいた。 あと一人このバッターを抑えればゲームセットしかし、真弓の疲れのピークが7回だったのに対しアフロの疲労のピークはこの9回に訪れいていた。肩が重い・・・いや肩だけじゃない、足も、・・・体全体がだるいだが、あと一人あと1球アフロは窪田に対し最後の力を振り絞り、渾身の1球を投じた。ストラィック! バッターアウト〜!ゲ〜〜〜ムセット!!パワラン学園は1対0で農業大縁を破り決勝進出を決めた!!それまでの慰労感が一気に吹っ飛んだ!しんへいがグラウンドめがけて突進してくるアフロはしんへいに思いっきり飛び掛かったしんへいに抱えられたアフロにサードからZETがショートからゆうがセカンドからガンクがファーストからヨウがみんながマウンドに突っ込んで来たレゲエ(Reven)も、トンマも、モヒカン(BIG)も外野から猛ダッシュで駆けて来る彼らの顔はみな喜びに満ち溢れた最高の笑顔だった。アフロもしんへいも今まで味わった事のない歓喜が心の底から湧き上がりその抑える事の出来ない興奮を今、体全体で現わしていた。実況「アフロ君、遂にやりました! 春の大会史上12人目のノーヒット・ノーラン達成です!!」はな監督は序盤アフロの投球数を抑えスタミナを温存させた。その効あってアフロは最後まで思いっきり全力投球が出来た。1試合で奪った三振23奪三振それは春夏通しての甲子園大会新記録として刻まれた。エピローグへ
エピローグ〜春の甲子園大会が始まる2週間前〜「みんなちょっと来てくれ〜!」アロハーがグランドで練習中の4軍ナインをベンチ前に呼びよせた。「RevevとBIGも戻ってなんとかこれで9人揃った訳だ」アロハーはそう言うと来週、早速練習試合を予定している事をナインに告げた。しんへい「で、対戦相手はどこ?」アロハーの口から対戦相手が告げられた。「去年の春の甲子園の優勝チーム**高校だ!」「おいおい! いきなりかよ〜」みんな一瞬驚きはしたものの、やる気満々の様子で更に練習に熱が入った。そして練習試合の日がやって来た。試合が始まる前に、はなコーチから各自に試合用のユニフォームが渡された。ユニフォームの背にはそれぞれ、しんへい 2ヨウ 3ガンク 4ZET 5ゆう 6Reven 7トンマ 8BIG 9が背番号として付いていた。しかし、何故かアフロのユニホームが見当たらず、「何で俺のユニホームだけないんだよ〜!」とぼやいていると「お前のはこれだ」と、アロハーが自分のバックからユニフォームを取り出しアフロに向けて投げ渡した。空中でひるがえったそのユニホームの背には14番が刻まれていた。アロハーが現役時代に付けていた14番を抜き取ってアフロのユニフォームに貼り付けたものだった。それをしっかりと掴み取ったアフロは、その14番をしみじみと眺め袖に手を通しみんなが待つグランド中央の小高い丘に駆けて行った。その後ろ姿をじっと見ていたアロハーの脳裏に幼き日のアフロとの出会いが鮮明に浮かんできた。(このフォーム、そんなに気に入ったか?)(僕にその投げ方教えてくれよ〜)成長したな坊主14番、確かにお前に渡したぞこれからはお前がその14番を背おって剛球伝説を再び蘇らせてみろそしてグラウンドでは今まさに新たな背番号14の剛球伝説が始まろうとしていたプレイボールと共にアフロの足が高々と蹴り上げられたおわり〜遥かな夢〜剛球伝説「背番号14」By アロハー沢村栄治投手の投球フォームを記録した数少ない映像写真これは軽くキャッチボールしている練習風景だが彼が全力で投球している姿は残念ながら記録として残っていない。