第5章:地獄のテスト(最終編)

溝口:「さあ、さあ、いよいよ僕の打順だってばさ。橘、勝負だ!」
橘:「貴様はなんか勘違いしていないか?お前にこの俺の球が打てるとでも思ったか?

今は2イニング目の表、溝口がバットをぶんぶん振りながら右のバッターボックスに入る。

溝口:「確かにあんたのナックルすごいけどさ、変化球って打者の打つタイミングをずらすために生まれてきたんだってばさ。ナックルが確実に来るって分かってればさ簡単にホームランにできるってばさ。」
橘:「じゃあ、ためしてみるか?」
近郷監督:「早くせんかい!!!何をモタモタしている?」

近郷監督の怒鳴りでグラウンドが急に静かになる。そしていよいよ運命の第一球・・・

佐伯:(あんなに挑発されてまでナックルを投げる気ですか・・・)
シューーー シュッ カキーン!!!
近郷監督:(ホームランだな・・・。)
溝口;「へ、狙った通りだ!」
橘:(ち、少しなめすぎたな。)
ホームラン!!!
佐伯:(す、すごい!確かに溝口君が言う通りで変化球は打者の打つタイミングをずらすために生まれてきました。ですけどあの橘君のナックルを初球で捕らえるとは。)

叫びまくるBチームに対して焦りの顔を隠せないAチーム。だがそれはほんの一瞬に過ぎなかった。橘がグラブを変える、それも右の手に・・・

Bチーム:「あいつ左手で投げるつもりなのか?馬鹿か?今のホームランで気をおかしくしたか?」
橘:「ふ、俺としたことが。あんなばかに打たれるとはな。さ、試合再開だ!」

次の三人の打者は恐怖を味わった。150km近い豪速球に、そしてその橘の闘志に。

ストライク!!!アウト!!!チェンジ!!!

近郷監督:「どうやら俺まで騙されていたらしい、橘はこれまでのテストをすべて右手でやって優秀な成績を残していた。だが実際は直球中心の左投げピッチャーだったとは。」

佐伯:(橘君の球のコントロールが少しはずれている。やはり溝口君に打たれたのはかなりの精神的なダメージになっていますね。)
溝口:(やっぱしね、右手で投げる時に感じた違和感そのせいか。)

2回裏には佐伯のヒットがあったが、得点にはいたらず。Aチームが空振り三振により減点されていく。そんな試合が動いたのは3回の裏だった。Bチームがヒットを繰り返して1点入手。

近郷監督:(このままではBチーム全員失格だな。橘が強すぎた、チームの構成を間違えてしまった。そう、このテストは1人でもチームから抜けただけでチームに酷く影響する。交代はいないんだからな。)

4回の表2アウト、溝口の第2打席。
溝口:「さあ、さあ2打席連続ホーマーっといきますか。」
橘:「・・・」
佐伯:(クラッシャーですか・・・)

第1球
ギューーー、ガーーー、バシ!!!ストライク!!!
クラッシャー、それはまるでミサイルのように重くのびがあった豪快なストレート。
溝口:(速い!それもかなりのノビだ!!!)
近郷監督:(ほう、かなりの決め球をもっているな。)
Bチーム:「まじかよ!今の球150km出ていたぜ!!!」

その後、溝口は空振りの三振。
橘:「ふん!お子様に打てる球じゃない!」
佐伯:(今のは全力投球だった。橘君はめったに全力投球はしない。つまり橘君は溝口君をバッターとして認めたって事でしょうか?)

5回の裏
、佐伯のヒットを始めに、セカウンドの神奈川のエラーで1点を奪われた。これはAチームの地獄を意味した。まだ5回裏なのにセカウンドの神奈川の失格。

Bチーム:「もう終わりだ〜。」
川崎:「いや、まだ終わっちゃいない。」
Bチーム:「何を言う!セカンドが抜けてどういう風に野球をするんだよ!」
川崎:「ここはセンターの真中くんをセカンドにコンバートする。」
Bチーム:「でもよ、橘の投球はなかなかうてないよ!このまま試合が続いても橘の投球で三振してどんどん人数がへるだけだよ!」
溝口:「それについて考えたんだけどもよ、ようするに三振さえしなければ失点にならないんだろ。つまりさみんなバントすればいいじゃん。」
Bチーム:「そうか、お前としてはいいアイデアじゃん!このまま失点がなければ受かるぜ!それで行こう!」

みごとに溝口の作戦は成功した。ヒットはなかったものの、三振はなかった。

佐伯:(確かにこの作戦はいいですね、ですけれどもあの溝口までバントするとは思いませんね。)
近郷監督:(この試験初だな、こんな作戦。これも橘のせいなのか?)

試合は2(A)―1(B)のまま流れていく。7回の表溝口の第三打席。

溝口:「あのさ、あのさ、これは甲子園まで残しておきたかったけどさ、橘に負けたくないから切り札使わしてもらうぜ。」

溝口がすたすた左バッターボックスに向かう。

Aチーム:「左で打つきかよ、でも俺たちあいつのおかげでまだいるわけだしよ、今回はあいつにかけてみようぜ。」
溝口:「クラッシャーで来い!」
橘:「・・・」

注文通りにクラッシャーをほうる橘。鋭くバットを振る溝口。ファールチップ。

佐伯:(クラッシャーが当てられた!)
Aチーム:「まじかよ!あいつ左打ちで150kmの球あてやがったぜ!」

第2球のクラッシャー。溝口がみごとにクラッシャーを真芯に捕らえた。だが・・・

溝口:(ぐ!!!なんて重い球だ。)

当たった瞬間、バットが折れる。折れたバットの先を佐伯がキャッチする。そして打ったボールはむざまにも橘の前に転がる。結局ピッチャーゴロに終わる。

近郷監督:(今バットが折れていなければボールは今頃どこにいたのだろうか。)
佐伯:(・・・)
橘:(くそ!!!)

試合は9回の表、近郷監督が立ち上がった。

近郷監督:「よし裏ルール発動だ!!!」

A、Bチームともにつばを飲む。

近郷監督:「試合に負けた方のチームのプレイヤー全員は最後に負けている点数の分だけポイントを減らされる。つまりBチームの諸君!今の点数のままで試合が終わったらお前らのほとんどが失格だ!!!」

9回の表、Bチームの最後の攻撃。悪運な事に打順は8番からで溝口には打順は回らない。溝口以外はまだ誰もヒットを打ってない。ここでのBチームの作戦はこうだった。奇跡を信じ最初の2球は思いっきり振りそして三球目は失点しないようにバント。だが結局2アウト。

Bチーム「おわりだ〜。」

だが橘がとった行動は誰もが驚いただろう。なんと1番の真中を始め、溝口の前の3打者を全員けんえいした。

近郷監督:「ばかめ、自分のまわりがわかってないようだな。」
佐伯:(よほどクラッシャーを当てられたのが悔しかったんでしょうね。あえてもう一度溝口君と勝負したかったんですね。)

2アウト満塁、この一打席はBチーム全員の運命を決めてしまう打席でもあった。

Bチーム:「たのむぜ!溝口!俺たちはみんな野球をやりたいんだ。」
溝口:「ああ、やらしてやるぜ、野球をさ。」
投球をすべてクラッシャーにする橘、だがそれに耐えてファールボールにする溝口。

近郷監督:(この勝負は橘の意地と溝口の精神力の勝負だな。だが仲間の力を得た溝口の精神力は強い!)

長い長い勝負に決着がついた。打球は橘の股を通り抜けタイムリーヒット。結局試合は3−2でBチームの勝利!!!

近郷監督:「よしゲームセット!!!お前ら17人は合格だ!!!」

暗い表情の橘に対して、胴上げされている溝口。
Bチーム:「やったぜ!!!」
溝口:「!!!」

急に走り出す溝口。そして草陰から起きあがって走る謎の忍者姿の男。

溝口:「お前だれだ!!!他校からのスパイだな!?」
???:「ふふ、今年の神等学園の1年は弱いな、偵察に来て損した。」
溝口:「なんだと!!!」(こいつ速い!!!)
財津:「名前だけ名乗っておこう。財津五郎だ、覚えておけ!」

とさらにスピードをあげて去っていった。

近郷監督:「桐原、試合は終わったのか?」
桐原:「はい、今のスパイ闘悪学園のものですね。」
近郷監督:「ああ、あれはまぎれもなく闘悪のユニフォームだな。二年前、試合中の暴力により失格になったがもう復活したか。」
桐原:「かなりの難敵になりそうですね。さらに緑黄高校もレベルをあげてきていますね。」
近郷監督:「・・・ところでどうだった最終テストは?」
桐原:「驚いたことにCチームはみな無事だったんですが、Dチームは一人しか・・・漣くんです。かなりの実力者です。A,Bチームにはいましたか、おもしろいのいましたか?」
近郷監督:「いたな、橘、佐伯、・・・そして溝口。だがレギュラーに至るものは一人もいなかったな。」

長い長い章が終わりました。こうして無事に合格した溝口達。だがそれは始まりに過ぎなかった。橘ですらレギュラーになれない神等学園のレベルとは?次章先輩達のレベルが明らかに!!!

第5章:地獄のテスト(最終編)「終了」