≪S☆J番外編 〜地獄の休暇と6つの塔〜≫

第4章


エリシアがヨウと別れた、ちょうどその頃。
ここは、ノーザストシティの東の外れにある、灯台だ。
その岬の前に、あてもなくウロウロする一人の男がいた。

「あー・・・しまった。 どーこで道間違えたか・・・」

MAXは、頭をかかえた。

「さーすがに、こんなところに金持ちのお嬢さんはいないよなぁー・・・」

そんなことを言いながらも、彼はとりあえず灯台の方へ向かった。
エリシア

なおもブツブツとつぶやきながらも、MAXは灯台の前に着いた。

MAX「ほぉ〜。 近くで見ると結構でかい灯台だな」

灯台のてっぺんを見上げ、そう言った。
そして、MAXが灯台に入ろうと、大きめの古びた鉄製扉に手をかけようとした時である。

(ギィィィィ・・・)

「!? (誰だ!?)」

彼はまだ扉に触れていないのに、それは開いた。
そして、中からスーツ姿の男が出てきた。
―――ラスクだ。

「MAXさん?!」

「あ・・・ラスクさん?」

2人は目を合わせて驚く。

「え!? MAXさん・・・どうしてこんな所に?」

ラスクが慌てて質問する。

「え・・・あ、いや、その・・・道に迷ったっていうか・・・あ、ち、違いますよ!
 お嬢さんが海が好きな人だったらなぁ〜と思い、その・・・ねっ」

MAXは、あたふたとぎこちなく答えた。

「それはそうと・・・ラスクさんこそ、こんなところで・・・何を?」

MAXは話を変えようと、少しわざとらしく聞いた。

「ああ、私ですか。 私もお嬢さんを探している途中だったんですが・・・実は、この灯台は我が財閥の管理下なんです。
 そして、先日こちらに来るとき、マルビス様に灯台の様子を見に行けと命じられていたので、ついでに寄ってみたんですよ。」

ラスクは灯台を指差して、説明した。

「あ〜、な〜るほど。 そういうことか」

MAXは、またわざとらしく手を叩いて納得した。
人探しの途中で道に迷ったなんて、どうしてもバレたくないようだ。

「あ、そうそう。 先ほど本部のナイダーさんから連絡がありましてね。
 お嬢様が見つかったようです」

「ええ〜っ!?(ガクッ・・・)」

MAXは、ものすごくがっかりした。

「? 何か悪いことでも?」

「あ・・・その、いや・・・何でも・・・ないです。 ハハ・・・」

お嬢様を先に見つけられ、儲かるチャンスを逃してしまったため、力なく笑う。

「ご協力、どうもありがとうございました。 お礼と言ってはなんですが・・・今夜開かれる、財閥のパーティーにMAXさんも参加しませんか?
 お食事や出し物など、色々とご用意しておりますが・・・いかかでしょう?」

ラスクの申し出に、MAXは突然顔を上げ、生気を取り戻し、輝かしい眼差しで言った。

「ハイ、ゼヒ参加させてクダサイッ!!」

MAXの頭の中には、先程ラスクが言った、前者の方しか浮かんでいなかった。





ところ変わって、ここは、ホテル「双葉」の1013号室。
このホテルの最上階であり、海側の部屋のため、海の見える眺めは素晴らしい。
テレビ、冷蔵庫、もちろんユニットバスも少し大きめのものが。
ベッドは3人分あり、それでもまだ自由なスペースが結構残されているほど広い。
しかしそのせいか、ちょっと値段がお高いのがアレである。
そんな居心地のいい部屋で、窓に向いたソファーに深く座り、ぼーっと夕日を眺めているのは、アフロだ。



ちなみに、部屋のベッドの位置は、こんな感じ。(横線は窓)

―――――――――
ベッド ソファー

ベッド ベッド




「いやぁー・・・いい眺めだ」

歳の割にずいぶんオヤジくさい台詞である。

「アロハーさんも、たまにはいいとこあるんだなって・・・しみじみ思います」

すっかり詩人である。
それはともかく、アロハーはこの日、何度くしゃみをしたことだろうか。

「しっかしまあ、ヨウさんからはもうすぐ来るって連絡あったけど・・・MAXさんはまた何処で油売ってんだ?」

さっきから、むせ〜んウォッチで連絡を取ろうとしても、圏外でつながらない。
ここのところ故障しているかに思われた無線だが、どうやらある程度の範囲でなら使えるらしい。
つまりMAXは、ここからだいぶ遠くにいる、という事になる。

「この分じゃ、また探しに行かなきゃならないかもな・・・」

と、アフロがぼやいていたその時である。

(コンコン、)

扉をノックする音。
部屋の奥にいるためよく聞こえなかったが、同時に何か声もした。

「あっ・・・ヨウさんか」

そう思ってソファーから立ち、扉へ向かうアフロ。

(ガチャ)

たどり着くと、さっそく扉を引いた。
・・・しかし、そこにいたのはヨウではなく、何か小包をかかえた、スーツ姿のホテルマン。

「あ、MAX様でしょうか?」

ヨウだと思っていたため、少しびっくりして口を開けたままのアフロに、従業員が質問する。

「はい・・・そうですけど」

アフロは、ホテルにMAX名義でチェックインしていたため、そう言った。
すると従業員は、右手の四角い小包を前に出した。

「こちらがロビーに届けられていましたので、お渡しに参りました」

「ん・・・?」

アフロは差し出された小包を手に取った。
MAX宛てのバイクの部品か何かだろうか。
真っ赤な包装紙に包まれたそれは、機械の部品にしては少し派手すぎる包装のような気もする。

「これを誰から預かったかわかります?」

しばらく小包に集中していたアフロは、ホテルマンに視線を戻すと、そう聞いた。
すると従業員は、少し困ったように答えた。

「さぁー・・・それを受け取ったのは私ではありませんし、それ以前に郵送で宛名無しだったそうですから・・・」

従業員の言葉に、アフロも首をかしげる。

「うーん・・・心当たりないなあ・・・。 やっぱりMAXさん宛て・・・かな」

そう思い、アフロは従業員に一言、お礼を言ってからドアを閉めた。
彼はベッドの横の台に小包を置くと、再びソファーに座り、もう半分沈みかけた夕日を眺めることにした。
それから数分後にようやく、すすやほこりで真っ黒に汚れたヨウが、この部屋に到着する。







(ズウゥゥゥゥン・・・!!!)



駅の方角から、轟音が響き渡る。
黒い煙がたちこめ、周辺には既に、人だかりができていた。

(ウゥーーーンン・・・)

(ピーポー ピーポー ピーポー・・・)

パトカーや救急車のサイレンが、押し寄せた人々の声を掻き消す。

「警部!」

一人の若い警官が走ってきて、薄緑色のコートを着た男に声をかけた。
くわえタバコのその男は、剃り残したあごひげと、まだそれほど多くはないが、深く刻まれた顔のしわを見る限り、40代後半といったところか。
コートに両手を突っ込み、駅か立ちのぼる煙を黙って見上げるその姿は、どことなく威厳を感じさせる。

「なんだ?」

「警部」と呼ばれたその男は、若い警官の方を見ると、タバコをくわえたまま少し太い声で答えた。

「ご苦労様です。 それがどうやら、爆弾は・・・」

彼はコートの男に向かい、小さめの声で何かを言った。

「・・・なんだと? 電車の中ではなくホームに?」

あまり驚いたそぶりは見せないが、少し動揺しているように見えるその男。
彼の名は、デンジャス=マルク。
ノーザスト市警の、やり手の警部だ。
彼はもう20年以上も警察の仕事を続けており、危険な現場に先頭に立って踏み入ったり、自ら名乗り出ておとり捜査に踏み切るような事から、
一部の者は、彼のことを「デンジャラス刑事(デカ)」と呼ばれ、署内では憧れる者も多い。

そのデンジャラス刑事が何をしに来たかというと、話は2週間前にさかのぼる。
市警本部に届いた、送り主は不明の封筒。
他は真っ白なその手紙には、真ん中に大きく、横書きでこう記されていた。


『2週間後に、ノーザストラインを襲撃する』


警察はその日から2週間、すべてのダイヤを休止させようと考えた。
だが、予告としても犯人像や目的が不確定だし、とてつもない数の人間が足止めをくらい、パニックが予想されるため、それは無理だということになった。
そこで、その当日までのすべてのダイヤに、捜査員を配備させる事にしたのである。
しかし、車両への直接的な攻撃だと思っていた警察は、見事に出し抜かれてしまったのだ。
犯人は駅のホームに時限爆弾を仕掛け、確かに<B>ノーザストラインを襲撃</B>したのだ。
デンジャスは、先ほども言ったように、何かあればすぐに飛んでくる。
そして彼は、たったいま、到着したばかりだった。

「被害は?」

デンジャスは、そのまま若い警官に聞いた。
その警官は、首を横に振って答えた。

「それが・・・ホームが崩れ落ち、車両の外も中も、まだ詳しい状況がわかっていません」

彼は、立ち昇る煙を指差した。

「ふむ・・・」

デンジャスは左手をポケットから出すと、あごをこすりながら考え始めた。

「少なくとも複数犯である事は確実だな・・・似たようなケースが、過去にあった」

さすが、長年この仕事を続けているだけのことはある。
そしてデンジャスは、ゴホンと咳払いをしてから話を変えた。

「ほかの脅迫状に関してはどうだ?」

若い警官は、煙から目を戻し、話した。

「はい。 タワーヒルズの各エリア、各階すべてに、警官が7人ずつ待機中です。 入り口にも、2人ずつ配備しました。
 グランドール財閥の式典が行われる本部にも、建物の中と外に40人ずつ待機させております。
 それから、例のホテルの方にも10人ほど、向かわせました」

ハキハキと、大きな声で話す警官。

「フム・・・そうか。 ならば心配はなさそうだな。 お前ももう行っていいぞ」

若い警官が話し終わると、デンジャスは手で合図しながら言った。

「ハイッ!」

警官は右手で敬礼のポーズをとり、その場を立ち去ろうとした。

「おい、お前」

と、立ち去ろうとした警官を、デンジャスが急に呼び止めた。
もう用はないだろうと思ったのか、その警官もぎこちなく振り返った。

「な・・・なんでしょう?」

ぎこちない返事。
しかし、今まで威厳のある、厳しい顔つきだったデンジャスは、突然ニッと笑って、言った。

「お前はいつか、でかくなるな!」