≪S☆J番外編 〜地獄の休暇と6つの塔〜≫
第2章
「うーん・・・案内図ではコッチが西口のハズなんだが。」
ところ変わってこちらはノーザストステーション。
この地域でも最大級の駅で、快速も急行もどの列車も必ず停まる。
更に、買い物客が集中するため地下街もあるということで、混雑しているのは当然。
(もちろんタワーヒルズができたことも混雑の原因である。)
そんな人ごみの中、一人案内図を見て首をかしげている青髪の青年がいた。
「おかしい・・・。 案内図ではトイレの横が西口なんだけどな。」
そんなことを言いつつ、明らかに地下街の中心部にいる青年。
彼の名はヨウ。
MAXたちと同じ本部直属のジャスティス防衛隊員である。
――――――はずなのだが、どうもジャスティスという組織は本部の隊員ほど抜けている人が多いらしく、
彼もまた駅の構内で迷子になってしまうボケ具合を見せている。
ちなみに、ノーザストステーションの構内には地下街も含め約30箇所のトイレが設置されている。
つまり、トイレを目印に場所を確認するということは、道ばたに生えた雑草を目印にすることに等しい。
ヨウ「どうするべきか・・・MAXさんにはカフェで待ってて下さいとは言っておいたものの・・・
自分が迷っちゃってるし、
それ以前にあの人オレの言ったこと忘れて勝手にどっか行っちゃいそうだし・・・。」
ズバリ、正解である。
ヨウ「はぁ・・・。 こんな時になんでこの『むせ〜んウォッチ(命名・アロハー)』は圏外なんだ?」
ヨウは左腕にしている腕時計を見ながら言った。
この「むせ〜んウォッチ」とは、名前の通り(?)無線機能付きの腕時計。
無線というより、この時代の携帯電話には必ずついている「3D会話機能」と言うべきか。
要するに、相手の顔を見ながら話せるのである。
しかし、本来ならどんなに離れていても
地球上なら絶対に電波が届くという説明を受けたはずなのに連絡が取れない。
何かしらの電波妨害が無ければ絶対に連絡が取れるとのことだったが・・・。
「どうかしましたかぁ?」
と、突然声をかけられたヨウは顔を上げた。
ヨウ「えーっと・・・どちら様ですか?」
声をかけてきたのは、見たところちょうど20歳といった感じの女性である。
オレンジ色の髪を後ろで結んだポニーテールで、蒼い目をしている。
「ああっとっと、すみません。 私、ここの地下街でアナウンス係をやってる『エリシア』っす。
『エリー』って呼んでください。」
慌てた様子で自己紹介するエリーは、口調からしてどう考えてもアナウンス係には思えない。
紺色っぽい制服、胸につけたバッジを見る限りどうやらこの地下街で働いていることは本当らしい。
しかし、周囲を見回してもインフォメーションらしき場所は無いので、
とりあえずヨウはこう質問してみた。
ヨウ「え〜っと・・・アナウンス係の方がどうしてここに?」
エリー「は・・・!? え・・・あ・・・イヤ・・・まあ・・・その。」
彼女はさっきよりも慌てた様子で、とっさに目をそらした。
しかし、気を取り直したのか再びヨウの方を向いて口を開いた。
エリー「あー・・・っと。 ちょっと仕事で失敗して・・・イライラしてたもんで。
・・・脱走してきちゃいましたぁアハハハハ〜」
ヨウ「は、はぁ・・・。(脱走って・・・。)」
と、そこでエリーは急に話をそらし、ヨウに質問した。
エリー「あ、ところでなんか迷ってるみたいっすけど大丈夫なんですか?」
そこで、ヨウもやっと自分が迷っていることを思い出した。
ヨウ「あっ! そうだった!! 西口ってどっちかわかりますか?
その先にあるカフェ『Chotto Samuiyo』でオレの仲間が待ってる(と思う)んですけど。」
こんなおっちょこちょいな案内係が構内の地図を把握しているハズがない、とは思ったが、
ダメ元で一応たずねてみた。
すると。
エリー「西口っすね? 案内しますけど。」
ヨウ「ええっ!? マジ!!?」
意外な答えに、ヨウはちょっとびっくりした。
エリー「じゃあ早速、私についてきてください。」
そのままエリーは右手の人気の無い方へ歩いて行こうとした。
ヨウ「あ、あのー!」
と、ヨウが彼女を呼び止めた。
エリーは立ち止まった。
エリー「なんでしょう?」
突然の呼びかけに、彼女はきょとんとした顔で振り返った。
ヨウ「そっちは行き止まりなんじゃ・・・?」
案内図を指差しながらヨウが言った。
エリー「ああ、だいじょぶですよ。 裏道っす。 とにかくついて来てください。」
サラッと言い残すと、彼女は再び早足で歩き始めた。
ヨウ「あっ・・・待ってくれよー!!」
走って追いかけるが、ヨウは不安で仕方なかった。
ちょうどその頃、街の北側のベイサイドライン沿いの大通りでは。
アフロ「はぁ・・・。 そういえばヨウさんとの待ち合わせであのカフェにいたんだった。」
MAXを見失ってしまったアフロ。
とりあえず宿泊予定のホテルにチェックインしようと、重そうなカバンを一人で運んでいる。
アフロ「まあどのホテルに泊まるかは知ってるから後で来てくれるだろうけど・・・。
MAXさんが一人で暴走し出すから本来の目的を忘れちゃったんだよなーまったく。」
もっともなことをブツブツ言いながら歩いているアフロ。
本当ならヨウとカフェで合流したあと3人でホテルにチェックイン、楽しみはそこからという予定だった。
その予定をMAXがブチ壊しにしたため、リュックを背負ったまま両手にカバン、
頭にも1つカバンをかけている今のアフロがいるのだ。
常人なら絶対に歩けない状態だが、
ジャスティスでの厳しい訓練を経験していた彼には大したこともない様子である。
アフロ「はぁー・・・まったく。 ・・・お、あのホテルだな。」
愚痴を言っている間に、なんとかホテルが見えてきた。
楕円形の建物が2つ、少しずれた形で連なっている。
見たところ、2つの建物の高さはタワーヒルズよりもある。
ホテルが見えて少し早足になったアフロは、あっという間に目の前に着いていた。
アフロ「ここ・・・だな・・・やっと・・・ついた・・・ゼィ・・・ゼィ・・・。(ドサッ)」
アフロはとりあえず荷物を地面に置いた。
訓練していたとはいえ流石に疲れたらしい。
アフロ「ええっと・・・ホテル『双葉』? なんだ旅館じゃあるまいし・・・。」
深呼吸をして息をととのえたアフロは、そう言って荷物を持ち直し、ホテルに入っていった。
【タワーC前】
MAX「ふい〜っ。 さてと、そろそろホテルに向かうとするか!」
買い物を終えたのか、MAXはさっそくタワーを出た。
どうやら先ほどのパーツ店以外では何も買っていないらしい。
MAX「そろそろ行かないと、アフロに怒られそうだしなー。」
そんなのんきなことを言いながら、MAXはホテルの方向へ向かっていた。
そこへ、反対側から眼鏡の男が周りを見回しながら必死に走ってくる。
(ドンッ)
MAX「おわっ!」
(パリーンッ)
MAXは、走ってきた男とぶつかってしまった。
「ああっと、すみません!」
MAXとぶつかった男は、かけていた眼鏡を落としてしまったらしい。
地面にしゃがみ込んで拾おうとした。
MAX「あっ・・・拾いますよ。」
そう言うと、MAXが落ちた眼鏡を拾う。
しかし、落ちた衝撃で眼鏡は割れてしまっていた。
MAX「ああ・・・すみません。 すぐに弁償します。」
珍しく雰囲気に押された彼は、気まずそうに言った。
「あ、いえ、別にいいですよ・・・。 もとはといえばぶつかってしまったのは私の方ですし、それに・・・」
男は懐に手を入れると、何やらさぐり始めた。
「・・・スペアがありますからね。」
その手には、先ほど落ちて割れてしまったものと同じ眼鏡が。
そして何事もなかったかのように、男はその眼鏡をかけた。
MAX「え・・・? あ、す、すみません。」
MAXは戸惑って、もう一度謝ってしまった。
黒スーツにネクタイ、丁寧な口調から、非常にしっかりした人だということが伺える。
スペアの眼鏡を持ち歩いているということは、よほど几帳面なのか。
髪型はオールバックに少し前髪がついた感じで、常にクシを持ち歩いていそうだ。
「・・・では、私は急いでいるのでこれで。」
男はそう言うとMAXから割れた眼鏡を受け取り、さっさとその場を立ち去ろうとした。
見たところ、よほど急いでいるようだ。
MAX「あ、あの!」
MAXはその様子を察して、声をかけた。
「はい・・・なんでしょうか?」
男は立ち止まり、振り返った。
MAX「何か探しものでしょうか? よかったらお手伝いしますけど。
一応、メガネ割っちゃいましたし・・・。」
「えっ・・・!?」
その言葉がズバリ的中したのか、眼鏡の男は少し動揺した。
少し間を置いてから口を開いた。
「あ・・・実は、その通りなんです。」
と、突然下を向いて話し始めようとした。
「あ、私はグランドール財閥に雇われている『ラスク』と申します。」
ラスクは思い出したように名乗った。
MAX「ざ、財閥・・・!!? ・・・あっと、俺はMAXです。 よろしく。」
MAXは驚いたが、お互い自己紹介がまだということで、とりあえず名前だけ言った。
若い感じだが、初対面で自分より年上と思った彼はなるべく丁寧な言葉遣いをした。
ラスク「それで、我が財閥のご令嬢がこの街で行方不明になってしまったのです・・・。」
ラスクは神妙な顔付きで話した。
MAX「ああ・・・そりゃ一大事だ。」
なるほどとばかりにMAXは頷いた。
財閥の令嬢が行方不明となれば、急いでいて人にぶつかるのも無理はない。
ラスク「よろしければ、一緒に探していただけないでしょうか? もちろん、お礼はいたします。」
と、MAXはニヤッとした。
MAX(財閥のご令嬢を見つけて・・・それで報酬を・・・ガッポリガッポリ。 ムフフ・・・)
確かに、こんな都合のいい話、そうは舞い込んでこない。
ラスク「あの・・・どうかなさいましたか?」
突然、妙なダンスを踊り始めたMAXに、ラスクがツッコんだ。
MAX「え、あ、何でも・・・ないですよ! ハハ・・・。 もちろん、引き受けますとも!」
MAXは、満面の笑みで返事をした。
ラスク「あ・・・ありがとうございます!」
それはこっちのセリフです、と喉まで出かかったが、なんとか飲み込んだ。
こうしてMAXの「財閥ご令嬢捜索、ガッポリガッポリ大作戦」が始動したのであった。
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