第5章

時間が2、3時間程流れて食事・風呂を終えた山田達4人は山田の部屋にやって来る。

山田>おい上田!
   あれはどういう事だ!
上田>何の事だ?
山田>しらばっくれるな!
   今日のメシの事に決まってるだろ。
   私は坊さんじゃないんだぞ、なんで全部野菜なんだ!
上田>そんな事俺が知るはず無いだろ!
山田>とにかく上田さん、10万円は返してもらいますからね。
上田>何故だ?
   俺は君に一言でも肉や魚が沢山出ると言ったか?
山田(ウッ…そんな事確かに言ってない、でもここで負けたら終わりだ負けるな、負けるな奈緒子!)
山田>言ってなくてもねえ、10万円も払えばもっと豪華な料理が出ると普通思いますよ。   
上田>豪華な料理ってどんなのだ?
山田>例えば、お肉料理だと厚い肉を使った牛丼とか。
   魚だとマグロの赤身、甘エビ、赤貝、ホタテの刺身……………。
   いーっぱいあるじゃないですか。
矢部>お前それのどこが豪華やねん。
山田>えっ! どう考えても超豪華料理じゃないですか。
矢部>そんなもん、ホカ弁で牛丼買って新鮮市場で刺身パック買ったら全部揃うやないか。
山田>そんな事! ああ、恐ろしい。
   そんな大それた事を簡単に言い放つとは。
矢部>どこが大それとるんじゃ!
山田>矢部さんは大金持ちだからそんな事言えるんですよ。
矢部>俺は金持ちやのうて普通の市民じゃ。
   しかし、お前とただ一つ違う所がある。

矢部がセリフと同時に上田と石原に目で合図

矢部>それはやな………
矢部>お前みたいに超ド級の貧乏や無い事や!(石原&上田と同時に)
石原>お前みたいに超ド級の貧乏や無い事じゃ!(矢部&上田と同時に)
上田>YOUみたいに超ド級の貧乏じゃ無い事だ!(矢部&石原と同時に)


3人ハイタッチしながら

3人>よし!!
山田>よしじゃないだろ、ていうか何でそんなに揃うんだ?
3人>何となく。
山田>何となくって……とにかく私は帰らせてもらいます。
矢部>それじゃ、俺らもそろそろ。
石原>じゃあ、先生また明日じゃ。
バシィ!!
石原>本日最後のありがとーございます。
石原>でも、なんでワシ叩かれたんかいのぉ?
矢部>お休みの挨拶や。
石原>そげなアイサツ聞いた事無いよ兄ぃ
矢部>ええやんか、世界に一つの挨拶や。
石原>そうですのぉ。……………ん?
   本当にそうかいのぉ?
矢部>ほらお前、そこ邪魔じゃドケドケ。
山田>ちょっと待ってくださいよ。
   私が先に出ようとしてたんじゃないですか。
矢部>じゃかあしい! さっさとドケドケ!
山田>もう、はいどうぞ!
矢部>そやお前そうやって最初から素直に言う事聞きゃええんや。

矢部が部屋を出て自分の部屋の前に立ったぐらいに

山田>やーい、そこのハーゲ、ハーゲ!
矢部>じゃかあしい! どこがハゲやねん。
   超フサフサやないか。
   それよりお前は一生パット入れとれ!
山田>うるさい! お前も一生かぶってろ!
矢部>何言うんじゃ俺が何かぶってるちゅうんか!
   アホー!
石原>兄ぃ他の部屋に迷惑じゃけえ、中に、中に。
矢部>このボケがー!

矢部と石原は部屋に入る
二人が入ると山田は上田の方向に体を向けて

山田>全くひどいですよね、私が出ようとしてたのに………
上田>YOU、一つ言いたい事がある。
山田>何ですか?
上田>子供か君は?
山田>はい?
上田>なにがそこのハーゲ、ハーゲだ。
   よく恥ずかしくないな。
山田>いや、ちょっとカチンと来たからつい………
上田>そんなんだからいつまでも彼氏が出来ないんだぞ。  
山田>はい、分かりました…………ってお前が言うな。
   とにかく私は帰らせてもらいます。
上田>ちょっと待て。
   本当に帰るのか?
山田>はい。
   ダメですか?
上田>いや、別に、ダメじゃないが………
   ああそうだ! 帰る前にあれを教えてくれ。
山田>あれって何ですか?
上田>ほら、最初に俺が君の部屋に行った時やった手品の事だ。
   あれをどうやったか教えてくれ。
山田>まだわかんないんですか?
上田>無論、あんな物はたちどころに解いてしまったが一応正解を聞いておかねばならない。
山田>はいはい、実はあれ上田さんが自分で選んでる様に思えますが実は選んでるのは私なんです。
上田>何?
山田>最初に上田さんに3つの漢字を書かせましたよね。
上田>ああ、確かに上田天才の最初の3文字を書いたぞ。
山田>あれってそういう意味だったんですか。
   もっと良い表現があると思うんですけど。
上田>何! あれ以上に俺を表す3文字があったというのか!
山田>はい、こっちの方が良かったと思いますよ。
   上と田と巨です。

上田、怒ったように顔を引きつらせながら

上田>じゃあYOUは山と田と貧だな。
山田>それじゃあ上田さんは上と田と泣ですね。
上田>だったら君は山と田と無だな。
   ………いつまで続ける気だ、さっさと話を進めろ。
山田>とにかく、上田さんは適当に漢字を書きました。
   その後私がどの漢字を残すか予想して別の紙に書きましたよね。
   でも私が書くのも3文字の中ならなんでも良かったんですよ。
上田>どういう意味だ?
山田>あの時私が書いたのは「田」でした。
   そして実際残ったのも「田」だった。
   一見すると不思議に見えますがあれは単純な言葉のトリックだったんです。
   まず私は上田さんに漢字を一つ選ばせた。
   すると上田さんは「上」を選んだ。
   次は「天」を選んだ。
   こうなればそのまま二つを消させれば良いんです。
   しかし上田さんが「田」を選んだ時は「じゃあその漢字を残そう」と私は言うはずだったんです。
上田>ちょっと待てよ。
   という事はだ、最初に俺が「田」を選んだらそれを残す様に指示する。
   最初に「田」以外を選び二つ目に「田」を選んだら最初は消させて二つ目は「さっきとは反対にしよう」とか言って「田」を残す。
   2回とも「田」を選ばなかった場合はあの時のように指示する。
   そうか、俺がどの漢字をどの順番で選んでも結局最後に残るのは「田」だったのか。
   ハハハ、やっぱりな。
   俺が思った通りだ。
山田>じゃあ、説明終わったんで私はこれで。
上田>本当の本当に帰るのか?
山田>はい、じゃあこれでバイナラ。

山田、障子を開け外に出て障子を閉める。
上田、立ち上がって障子に向かって歩いて行き、開けながら

上田>待てよYOU。   
   ………もういないのか、どうやったらすぐにいなくなれるんだ?
   
上田、諦めて部屋に戻る
しかしそこには奈緒子が!