第4章

上田>そ、そんなバカな(小声)
山田>上田、騙されるな。(小声)
   絶対何か仕掛けがあるはずだ。(小声)
山部>このまま、宙にしばらく浮いてそれから降りて来ます。

それからしばらくして皇女人様が地面に降りてビデオが終わる

山部>これで終わりです。
   どうですか? 皇女人様の力がお分かりになられたでしょうか?
石原>ちょっと、待つんじゃーー!
   皆、騙されちゃいけんのお。
   あのビデオはインチキじゃ。
矢部>お前何言ってんのか分かっとるんか?(小声)
石原>当たり前だのクラッカーですのお、兄ぃ。
山田>古っ!(小声)
石原>とにかく、今のビデオはインチキじゃけえのお。
山部>どの様にインチキだと言うのですか?
   実際に皇女人様は宙に浮いていたじゃありませんか。
石原>じゃけえ、それがインチキじゃと言うとるんじゃのお。
   つまり今の映像は天井も壁も真っ黒の部屋の映像とと何かで吊り上げている皇女人様の映像を合成したんじゃのお。
   そして、その後に吊り上げている物をコンピュータで消したんじゃのお。
石原>どうじゃ、当たりじゃろ?
   外れとるわけが無いのお。
   そうじゃ、決まりじゃ。
   これで決まりじゃーー! 吉野家。
山田>ドットコムの変化かよ。(小声)
近くに座ってるお爺さん>それは、違うな。
石原>え?
お爺さん>私は長い間画像関系の仕事をしていた。
     しかもその中で映像合成の仕事もかなりして来た。
     だから、合成映像なら1発で分かるはずだ。
     しかし、今のは合成ではなかった。
石原>そ、そげなハッキリと。
山部>いま、吉田様が言われた通りです。
   これは合成やインチキ等ではありません。
   皇女人様のお力は本物なのです!
   次は皆様に皇女人様の力である壁抜けを見て頂きます。
   外に出てもらいますが外はお寒いので1度部屋に帰って上着でも着て玄関に来て下さい。
   それでは、一旦解散。

山部を含め全員が部屋に戻って行くが山田達4人はその場に残っている。

矢部>上田先生、一体どういう事なんですかねえ?
上田>フフフフフ。
   実は私にはあのトリックが見破れたのです。
山田>本当ですか?
上田>当たり前だのビスケット。
山田>もう、良いって。
上田>まず説明する前に矢部さん、フレミング左手の法則というのをご存知ですか?
矢部>俺は知らんなあ。
   石原、お前知っとるか?
石原>フフフフフ。
   知っとるけえのお。
   フレミングっちゅうのはあれじゃ。
   動物園とかにおる片足で立ってるピンクの鳥の事じゃ。
   そうですのお、先生?
山田>それ、フラミンゴですよ。
石原>へ? そうじゃったかいのお?
矢部>お前やっぱり知らんやないか!
バシィ!

上田>まあ、良いでしょう。
   フレミングというのは昔に実在していた学者の名前ですよ。
   そして、左手の法則は電流と磁界とそれによって生じる力を片手で表すという素晴らしい物なんですよ。
   確か、中等学校で習うはずです。
山田>中学って言えよ。(小声)
上田>それでは、本題に戻りましょう。
   まず、フレミングの左手の法則ですが左手の親指と人差し指と中指をそれぞれが90度になるように立てます。
上田>こういう風に。
   そしてこれが何を表すかというと中指の向いてる方が電流の向き。
   人差し指が磁界の向き。  
   親指が力の向きです。
   さあ、ここまでで何が言いたいか分かりましたか?
矢部>分かりましたよ、先生。
   つまり上向きの力を生じさせるためにあのビデオの部屋に電線と大きな磁石を置いていたという事でしょう?
上田>その通り。  
   部屋が全部黒かったのはその道具を隠すためなんですよ。
矢部>さっすがですな〜先生。
山田>でも上田さん。   
   それで本当に人が浮くんですか?
上田>何?
山田>いや、だから人を宙に浮かせるためにはその人の体重と同じくらいの力を生じさせないといけないわけでしょう?
   本当にそんな力が生み出せるのかなあ、と思って。
上田>ちょっと、待てよ。  
   女性の平均体重が40後半から60キロだ。
   つまり、下から50キロ程度の力がないといけないから………無理だな。
   そんな力が簡単に作れるはずがない。
上田>駄目か……これでまた分からないままだな。
山田>そうでもありませんよ。
上田>どういう意味だ?
山田>だから今の会話で疑問が解けてトリックが分かったんですよ。
上田>本当か? どういうのだ?
山田>それはですね・・
山部>お話中すいませんが他の方は外に集まっているので皆様も出てきて頂けませんでしょうか?
山田>あっすいません。
   じゃあ、上田さん。
   この話はまた後で。
上田>分かった。
山部>こちらでございます。

5人は外に出て皆の所に行く。

山田>うわあ、でっかーい。
石原>兄ぃ、警視庁よりデカイんじゃないですかいのぉ。
矢部>んなわけあるかい!
バチィ!
石原>ありがとーございます。
矢部>音がいつもと違ったな。
   もう一回いってみよーか。
石原>兄ぃやめてー。

山田達4人の目の前に現れたのは巨大な壁。
その真ん中には壁より外に出ている天井と床が丸い部屋が一つ。
その部屋と外とを仕切るのは赤いカーテンらしい。
そして、その部屋から1m程右側には茶色のおそらく木製のドアが。
ノブは珍しい金色の丸ノブ。
(この説明は山田達4人の視点、つまり宿舎側から見た風景です。)

山部>みなさま、お待たせ致しました。
   さきほどはビデオでしたが今度は本物の皇女人様がお力を見せてくださるそうです。
   で、今から皇女人様が出て来るわけですが私は他の仕事がありますので失礼します。
   この後のことはそこにいる江藤がやってくれるのでご安心下さい。
   それでは、また後ほど。

山部は宿舎の方に帰って行く。

江藤>皇女人様は後少しで来ますんでちょっと待っとてくだせぇ。
山田>くだせぇって何語?(小声)

数分後皆の後ろからさっきのビデオと同じ格好の人が歩いてきて江藤の横に立つ。

江藤>皆さん、この方こそが桂 皇女人様でごぜぇます。
   では、早速皇女人様の力の一つである壁抜けを見せていただきましょう。
江藤>えー、まず仕掛けがねえっちゅう事を調べて貰わねえといけねえな。
   じゃあ1番前にいる山田さん、前に。
上田>あいつはいつの間に前に行ったんだ?(小声)
江藤>じゃあ、今から皇女人様はここのカーテンの向こうに入ってその壁を通り抜けるんだ。
   だから壁に穴が無いか、地面に穴が無いかを調べてくれ。
   向こう側の部屋に行くには通り抜けるという方法と俺達がいる所よりもう少し右側にあるドアから行くしかねえ。
  じゃあ、調べて良いぞ。
山田>壁に抜け道は無し。(独り言の様に) 
   地面に穴は無し。(独り言の様に)
   天井にも……おかしい所は無いか。(独り言の様に)
   カーテンは・・あっこれ!
一同>!?
山田>家のより立派で高そう。
矢部>何言っとんのじゃ、あのバカ女は。
山田>江藤さん、調べ終わりましたよ。
江藤>じゃ、向こうで皆と見てて下せぇ。
山田>ははあ、お役人様。
上田>お役人様って………誰?
      
山田が他の3人の所に帰って来る。

上田>YOU、なんの仕掛けも無かったのか?
山田>無かったですよ。
   ドアの向こうにも行って向こうも調べましたけどおかしな所は何もありませんでした。
   ただ……。
上田>ただ、何だ?
山田>ただ、カーテンが家のより立派だったのが気になりました。
上田>君のうちよりボロイカーテンの方が少ないんじゃないのか?
山田>何だそれ。
上田>いや、特に深い意味は無いよ。
江藤>では、今から始まりです。
   皇女人様、お願いします。

皇女人様が頷き部屋の中に入りカーテンを閉める。

〜1、2分後〜

皇女人>はああああ!!
一同>!?
江藤>今のが向こうに行った合図です。
   その証拠にこちらには誰もいません。
   カーテンを開けてみますよ。
上田>誰もいない…………。
江藤>では、次は向こうに行ってみましょう。

〜全員ドアを通って移動中〜

江藤>では、こちらのカーテンを開けますよ。
   はいっ!!

カーテンを開けてみるとそこには人が。

上田>本当に通りぬけたのか?
江藤>その通りでごぜぇます。
   皇女人様の力は本物のです。
   では、もう1回向こうに行って頂きましょう。

再びカーテンが閉められ1、2分後に声がしてカーテンを開けると誰もいない。
ドアを通って向こうに帰ってカーテンを開けるとそこには人が。

江藤>皇女人様のお力が分かった事でしょう。
   今日はこの後食事などを済ませた後寝ていただきます。
   明日は皇女人様の最大の能力死者との会話をして頂きます。
   それでは、解散。

注意:壁と部屋などの説明をもう少し。
   壁から出ている部屋は天井も床もカーテンのレールも全て丸くなっています。
   つまり、中をコンクリートで固めたら円柱を半分に切ったような形になります。
   そして、そんな形の部屋が壁にくっついているのです。
   ですから部屋に入ってカーテンを閉めると次の様になります。
   宿舎側:カーテン
   宿舎の方を最初向いてそれから右向くと:部屋の壁
   宿舎の方を最初向いてそれから左向くと:部屋の壁
   宿舎と反対:大きな壁、つまりコンクリート。