第二話「COOL!」

さっきから僕はこの屋敷の居間で1時間弱待っているが、
一向に祖父がくる気配が無い。。。僕は監禁されたのでは
無いかという不安も出てきた。

だがその不安は数分後には吹っ飛んだ。
ギィィ。とびらが開く音がして向こうからオキナがやって来た。
「いやーすまん、すまん。」
オキナは嬉しそうに笑っている。
「準備するのに時間が掛かってナ。学校は楽しいか???」
オキナはまるでいつも会っているおじいさんのような
馴れ馴れしい口調で僕に話しかけてきた。
「あの・・・。そんなことを聞く為に僕をココに?」
「あっ。いやいやすまん。まずじゃあ、ここに呼ぶまでの
いきさつを話そうか?」

オキナは僕にすべてを打ち明けた。ある日、オキナの家の前に
捨て子が立っていて、笑いながら自分を見たこと、養子にする
と言ったら息子の嫁に猛反対されて、孫と会うことを許されなくなったこと。

「・・・。その子は今、どこに?」
「あ、あぁ。瑞穂。瑞穂〜」
「はーい。」
その子は元気な声を出すとオキナが入ってきた扉から出てきた。
「瑞穂だよ。祐介と同い年だ。」
「こんにちは。じぃやにはいつもお世話になってます。」
じぃや?僕は、何かを瑞穂に取られたような気がしていたが
一応、かるくお辞儀をした。

「そうじゃ、お前を呼んだ理由は・・・野球チームを
リトルリーグに作ることになったんだ。それでジュニアリーグ
の名簿表に目を通していたら、お前の名前があって・・・」
僕は、自分の耳を疑った。父が死んでからいままで一度も
僕の前で野球という言葉を発した人はいなかったからだ。
「もう、野球はやめました。父が死んだ日から。」
「そうか・・・お前の父さんにもコーチをやってもらうつもり
だったのだが。プロ野球選手が2人もコーチ陣にいると心強い
からな。」
「2人ですか?」
「あぁ、ワシもプロ野球選手だったんだ。。。」
「だから父さんはあんなに野球やれって・・・」
僕は、父さんの言葉が聞こえてきた。ような気がした。
父さんはいつも僕に3人でプロを目指そう!と言っていた。
いつも3人目がだれだか疑問に思っていたのだが・・・

「もう一度、野球をやらないか!?」
「・・・はぃ!」
「よし!じゃあ、まずワシの誕生会に出席してくれ6時からだ。
5階に祐介の部屋を作っておいたからそこで休んでなさい。」
「はい!」
「瑞穂、祐介を連れっていって。」
「はぁ〜ぃ。」
(ガシーン。)
エレベーターの開く音が聞こえた。

二話終