「ninja-z」特別編 初恋

作者:さまわら

その子は、淡いベールに包まれていた。
正確にいうと、「彼女は」になるだろう。ひとつ上なのだから。
それが僕の初恋。

小学生の頃から野球漬けで、女の子のことなんて思ったことが
なかった。暇さえあれば、練習をしていたし、デートなんて
つまらない物だとさえ思っていた。
毎年、チョコをもらうが、そんな物はすぐにあげるか捨てるか
そのどっちかだった。僕が初めて彼女を見たのは2002年冬。
彼女にあってから僕はいままで自分がしてきたことがどれだけ
卑劣なことか!ということにこの頃気づいたのである。

それは何の変哲もない、日曜の昼。
その日僕は小学校を卒業し、卒業記念に町でぶらついている
所だった。ちょうど二丁目の角を曲がったとこ。。。
(ドンっ)
不意にだれかとぶつかった。
すぐに起き上がろうとするが、起き上がれない。
下に張っている氷が邪魔をするのだった。
「だ、だいじょうぶ?」
彼女は僕に手を差し伸べた。
「だいじょうぶです。」
僕は簡潔に言うとその場から立ち去ろうとしていた。
チラッっと彼女の顔を見たその瞬間から恋に落ちたのであった。。。
ニコッっと笑う幼い子供のような笑顔。
「そちらは?」
僕は、話をつなぐことにした。
「え?あぁ。私?私は大丈夫。滑んなかったから。(笑」
「・・・・・(汗」
「あ!ゴメン。別にダサイとかそういうことを言ったんじゃないのよ。」
彼女はあわてて言った。
「別にそんなことは思ってませんよ。」
僕も、あわてて返した。
「ねぇ、お詫びになんかおごってあげるよ。」
え?という顔をしたときすでに彼女は白い地面の上を走りながら
早くしなよ!とおいでおいでをしている。

・・・・cafe
「・・・へぇ。じゃあ今年から中学生?」
「はい。」
「別に敬語使わなくていいのよ。堅苦しいでしょ?」
「は、はぁ。」
「どこの中学行くの?」
「東城中学。」
「じゃあ、私と一緒じゃない!」
彼女はまたニコッとした。この笑顔が好きだ。
それに同じ中学だなんて、今日はhappy dayだ。
「私は、南 奈々。あなたは?」
「僕は、凪 佑介。」
「へぇ〜。じゃあ佑ちゃんね?」
「え、えーとその・・・」
「あはははは。」
「なにが可笑しいんですか?」
「面白い子。じゃあ、そろそろ私帰るね。じゃあね野球青年。」
彼女は紅茶を飲み干して、僕にそう言った。
ちゃんと、手にはお金が握られていた。
僕はその手を握った。というよりも僕は抑えたつもりだったのだが。
「あ、えーと、僕に払わせてください。」
彼女はコクリとうなずくと携帯の番号が書かれた紙をそっと、僕に握らせた。
その紙はいまでも取ってある。一度もかけていないが・・・・
そしてまた、ニッコリして
「またね。」
といって立ち去った。


それにしても青年といわれたのは初めてだった。
・・・でもどうして僕が野球をやっていることを知っているのだろうか?
僕は、ますますその彼女に引かれていった。
父さんが死ななかったら今頃彼女とはいい関係になっていただろう。
実は、このお話には続きがあるんだ。
まぁ、それはninja-zっていう小説で話すことにするよ。。。